富山県警南砺(なんと)署は5日午前7時50分ごろ、石川県境の医王山(いおうぜん)に4日正午すぎから登山に出掛けて行方が分からなくなっていた金沢市の親子3人を富山県警のヘリコプターが見つけ、救助したと発表した。合同捜査をした石川県警金沢中署でも同様の発表があった。

南砺署によると、救助されたのは金沢市の薬剤師飯田泰広さん(44)と長男影虎君(10)、長女千尋さん(8)で、いずれもけがもないという。

飯田さんは家族6人で4日午後0時30分ごろ医王山に入山した。医王山は山塊の総称で、最高峰は奥医王山(939メートル)で、ほかに白兀山(しらはげやま=896メートル)などで構成される。本格的な登山だけではなくハイキング目的で家族連れも多く、子どもから大人までそれぞれの技量で山遊びを楽しめることで知られる。

薬草採種でも人気がありこのエリアの名称の由来となっている。トンビのくちばしに似た空に向かってとんがった形状のトンビ岩やそのほとりの大沼ではサンショウウオの生息も確認されている。飯田さん家族は3段になって落ちていく高さ約20メートルの三蛇ケ滝などを訪れたという。

飯田さんは過去にも何度か医王山には訪れており、初めての場所ではなかったという。当初、飯田さんの妻と末っ子がトンビ岩の手前で家に引き返し、飯田さん親子と義母(69)の4人でトンビ岩から三蛇ケ滝に向かうコースで山歩きに興じていたという。

途中で義母が携帯電話の電波が入らないエリアにいることが不安になり「ちょっと電話の入る場所まで降りてみる」と3人から離れた。義母は道に迷って携帯の電波の入るエリアまで戻り119番通報をして午後4時30分に保護された。

ただ、別行動となった飯田さん親子3人は山道で所在が分からなくなり、飯田さんの妻が午後8時34分に「岩場に登山した家族が戻らない」として119番通報した。

飯田さん親子はトンビ岩から約300メートル離れた石川県側の豊吉川沿いの西斜面で固まるようにして一夜を明かしたという。装備は子ども2人も底の厚いトレッキングシューズをはいて、雨露をしのぐカッパを携行し夜間は着込んでいたという。食料もおにぎり、ゆでたまご、お菓子と水をそれぞれがもっていて、飲食料補給はできたという。

一夜明けた5日午前7時50分、富山県警のヘリコプターが同所で立って手を振る3人をみつけた。ホバリングしながら捜査員がロープで降りて、3人を次々にヘリコプター内に搬入して、21分後には富山県南砺消防署グラウンドに降り立った。

3人は元気で歩いてヘリコプターから降りて、そのまま検診したが熱はいずれも36度台の平熱だった。同消防署広報担当は「ヘリから降りてくるときに立ち会ったが、血色もよく質問にもちゃんと答えていた。お父さんが落ち着いて、夜間動き回らずに風裏になる場所で夜が明けるのを冷静に待てたのがよかったのではないか」と話した。【寺沢卓】