7月4日に告示される埼玉県の三郷市議選が注目されている。2019年、茨城県境町で起きた一家殺傷事件で、殺人容疑で逮捕された三郷市の岡庭由征容疑者(26)と同姓で、同じ地区に住むため、「死ね」など約300件の中傷にあった市議が8選を目指し、立候補する。

岡庭容疑者が5月7日に殺人容疑で逮捕されると、自宅や長男が経営する会社に「親戚なのか」と電話が相次ぎ、まとめサイトに写真付きで掲載されたのは岡庭明市議(82)。議長を2期務めた最長老で、電話番号も公開しているため、無言電話やワン切りを含め、嫌がらせが相次いだ。

「10年前にもそういうことがありました」。高校2年の岡庭容疑者が通り魔事件を起こした2011年。少年犯罪だったが、ネットで実名が明かされ、市議の名前も書き込まれた。全国的には珍しい岡庭姓だが、市議や容疑者が住む地区には「40軒くらいある」のだという。家は約150メートル離れている。

選管と地元署に相談し、自身のホームページに「同じ地区で同姓ですが、親戚ではありません。現在、脅迫電話等は警察に相談させていただいており、事実無根の情報に基づいてSNS等で拡散している書き込みに関しては法的手段をとる準備を進めております」と掲載すると、嫌がらせの電話はなくなった。書き込みは一部残ったままになっている。

「15~16件、謝罪の文書が来ました。1件は米国在住でエアメールで届きました。私としてみれば選挙妨害だと思いますけど、名前も写真も公表している立場ですから、これ以上は耐えなければいけないのかなとも思っています」。地元に対する情熱は人一倍と自負し、週1回のゴルフなど体力も年齢の割に十分あると思っているが、今回を最後の選挙にする。

「『岡庭という名前で世間を騒がせてますけど、何ら関係ありません』なんてマイクを通して言って歩きませんよ。通常の選挙戦をやるつもりです」。定数24に34~35人が立候補する見通しだ。8回目の選挙で一番の激戦になる。

【中嶋文明】