松坂大輔が高校時代から足しげく通ったハンバーガーショップがあった。「サンテオレ・能見台店」(横浜市金沢区)だ。

横浜高校時代、松坂ら練習で疲れた選手たちの胃袋を満たした“憩いの場”だった。成瀬善久、涌井秀章、筒香嘉智、近藤健介…店内には国内外で活躍する選手たちのサインや寄せ書きが壁じゅうに貼ってあり、練習試合を観戦した横浜高校ファンが立ち寄る名スポットにもなっていた。2015年3月。消費税8%値上げのあおりを受け30年の営業にピリオドを打って閉店。最後は松坂と同級生の後藤武敏、元DeNAの荒波翔、タレントの上地雄輔らがユニホームをもってかけつけた。横浜の選手たちを息子のようにかわいがってきたマネージャー・大塚幸子さん(71)は思い出を口にする。

「引退するなんてショック。涙が出るね。あの代の子たちは顔見れば31人全員わかるわよ。ビデオを見ては思い出ばかり浸ってる。仲のいい代だったからね」。

定番は「柔らかイカバーガーとコカ・コーラ」。プロ入り後も「大塚ちゃんコンチハ!」とひょっこり顔を見せに来たそうだ。「マツ(松坂の愛称)は必ず親友を1人連れてくるの。その子を先に店に行かせて、私がいるかどうかを確認してからソッと中に入ってきた。照れ屋なの。注目されて疲れていたのかも。私は黙ってイカバーガーを出すだけでした」。

人情あふれる店だった。当時、悩みや愚痴を吐ける相手が大塚さんだった。「身体に気を付けて、引退後は家族と幸せに過ごして欲しいね」。最後は涙声でつぶやいた。【樫本ゆき】

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