作家の村上春樹氏(72)が29日、TOKYO FM系で放送された自らDJを務めるラジオ番組「村上RADIO」の番組内で、菅義偉首相(72)の新型コロナウイルスに対する発言を、痛烈に批判。「この人、聞く耳をあまり持たないみたいだけど、目だけは良いのかもしれない。あるいは見たい物だけ見ているのかも知れない」と“一刀両断”した。

村上氏は、番組の最後に「今日の言葉」を紹介するが、その中で東京オリンピック(五輪)開幕直前の7月20日に都内のホテルで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会の冒頭のあいさつで、菅首相が口にした

「新型コロナ感染拡大は世界中で一進一退を繰り返しているが、ワクチン接種も始まり、長いトンネルにようやく出口が見え始めている」

とのあいさつを紹介した。

村上氏 今日の言葉は、われらが菅義偉首相のお言葉です。彼は7月のオリンピック開会式直前にIOCの総会で、新型コロナに関して、このように言っています。

「新型コロナの感染拡大は、世界で一進一退を繰り返していますが、長いトンネルに出口が見え始めています」

その上で、村上氏は「あのですねぇ…もしね、出口が本当に見えていたんだとしたら、菅さんはお年の割に、すごく視力が良いんでしょうね」と菅氏を痛切に皮肉った。続けて「僕はね、菅さんと同い年だけど、出口なんて全然、見えていません。この人、聞く耳をあまり持たないみたいだけど、目だけは良いのかもしれない。あるいは見たい物だけ見ているのかも知れない。どちらでしょうね?」と、痛烈な皮肉を交え、菅氏の発言に疑問を呈した。

村上氏は「さて、現実には、なかなか出口が見えて来ない状況ですが、僕らは今、ここにあるものを何とか目いっぱい活用して、本当に出口が見えてくるまで、うまく生き延びて、やっていくしかありません。音楽でも、猫でも、冷たいビールでも、心のねじくれたコーヒーでも、何でも、あなたが好きなものを、うまく活用して下さい」と、独特の言い回しでリスナーに健康維持、感染拡大防止を訴えた。

「村上 RADIO」は、18年8月から放送を開始。当初は不定期だったが、今年4月1日から、毎月最終日曜日の夜放送の月1回レギュラー番組になった。20年大みそかには年越し特番を放送し、19年6月、今年2月には都内でライブも開催。今年のライブは、コロナ禍を受けて100席限定で有料入場者を入れたほか、有料で全世界に配信され、村上氏が配信の形であれ異例となる映像への出演を果たしたことも話題となった。

第27回のこの日の放送は「Music in MURAKAMI~村上作品に出てくる音楽~」と題し、全国から寄せられた「村上春樹の小説に出てくる音楽」のリクエストを特集した企画を放送。村上氏が執筆当時の記憶をたどりながら自身の小説を解説、さらには楽曲とともに自身の書いた小説の一節の朗読も披露。「僕の作品に出てくる音楽の特集をやってほしいという要望を、数多くいただいています。いうなれば、小説のサントラ盤みたいなものですね」と村上氏自身が位置付ける内容となった。