菅義偉首相の後継を決める自民党総裁選(29日投開票)まで残り1週間となった22日、「こども庁」創設に向けた党内の政策討論会に4候補が出席した。デジタル庁と並ぶ首相の肝いり政策で菅氏の支持を受ける河野太郎行革相は「食育(の問題)をやった時に自治体の窓口が内閣府、農水省、文科省、厚労省といっぱいあって全部とやりとりをしなくてはならなかった。国の窓口はここだ、というのがあった方がいい」と、熱弁をふるって全面賛同した。

同庁の早期設置に関しては河野氏、岸田文雄前政調会長、野田聖子幹事長代行が賛成と回答したが、事前収録したビデオで参加した高市早苗前総務相は明言を避けた。

討論会を主催したのは若手を中心に派閥を横断した約90人の有志グループ。「こども庁」は首相が政権浮揚、自らの再選への布石としたかった一手。それだけに総裁選中に創設アピールを行うのは、首相に配慮した、お手盛り感が強い。

首相は30日に期限を迎える緊急事態宣言について全国的な感染者の減少傾向を受け、解除へ向けた最終調整中で、28日にも正式決定の方向だ。29日の投開票の1週間前から解除のアドバルーンを揚げることで、自らワクチン担当相に任命した河野氏の実績を強調して追い風を吹かせ、退陣後の影響力を維持したい思惑も伺わせる。

だが、8月の横浜市長選でも首相が全面支援した前元国家公安委員長の小此木八郎氏が惨敗。党内には「(菅首相の)全面支援がなかったら、分からなかった」とする声が今もくすぶり、首相の“露出”に対する河野陣営の反応は複雑だ。「マイナスになることはないが、プラスになるかどうか…」と言葉を濁す中堅議員や「仮定の話には答えられない」とするベテラン議員も。「国民的不人気」の首相のエールにもろ手を挙げた歓迎ムードはなく、ありがた迷惑の感が漂った。

議員票(382)で岸田氏優勢、党員・投票(382)で河野氏優位の大接戦とする最新情勢もある。残り1週間となった終盤戦へ向け、情勢は揺れ動いている。【大上悟】