新型コロナウイルス感染が全国的に影響を及ぼす中、24時間無人営業でテークアウト専門の業態で爆発的に店舗展開を続けている群馬県の「餃子の雪松」が、日本のギョーザの“首都”宇都宮市に攻め込んだ。

群馬県みなかみ町で1940年(昭15)創業の中華料理店「お食事処 雪松」が本店。看板メニューのギョーザを3代目のおい長谷川保さんが受け継いだ。長谷川さんがオーナーの東京都国分寺市の運営会社「YES」が18年9月から「餃子の雪松」として運営。冷凍庫に入ったギョーザは1セット36個入り(18個入りパック2箱)で1000円(税込み)。店内に設置されたさい銭箱に似た料金箱にお金を入れて購入する。

手軽さや新型コロナ禍で自宅で過ごす時間が増えた「おうち需要」が追い風となった。わずか3年余りで240店舗以上に成長。22年春ごろまでに全国400店舗達成を目指す。マーケティング部の高野内謙伍部長は「赤字店舗と閉店した店舗は今まで1店舗もないんです」と好調をアピールも、9月25日に開店した宇都宮店に限っては「この記録が途絶えたら悲しい。惨敗だったら嫌だな」と他店では抱くことのなかった特別な思いものぞかせた。

宇都宮の人たちはどのように感じているのだろうか。JR宇都宮駅から車で北に約8分の同市大上曽町に出店した宇都宮店に買いに来た60代の女性はギョーザを週に1、2回食べるといい「おいしかったらローテーションの中に入れます」と笑顔。夫婦で買いに来た50代の男性は「コロナで飲食店が空いていないので、無人で24時間営業はありがたい」。鹿沼店で購入したことがあるという60代の女性は「野菜たっぷりでさらっとした味が好き」と高評価だ。それでも、オープン日と翌日の初動を見守った店舗スタッフは「“聖地”のプライドか、他店舗と比べて人の入りが弱いです」と慎重に分析していた。

青森から兵庫まで陣地を広げてきた餃子の雪松。年間の購入額で宇都宮市と毎年競ってきた浜松市は既に順調な売り上げを勝ち取った。ギョーザの聖地宇都宮の牙城攻略の戦いは始まったばかりだ。【沢田直人】

◆餃子の雪松 群馬県みなかみ町の「お食事処 雪松」が本店。あんは秘伝のレシピで下味がつけられ、肉は約1%。国産キャベツがこだわりで野菜の食感と甘みが詰まっている。無人販売だが、盗難などのトラブルはほとんどなく、個数と売り上げが食い違っても翌日にはぴったり合うことも。支払いは店舗の料金箱に入れる現金のみの対応。19年7月に東京都練馬区の大泉学園店で、初めて無人店舗をオープン。その後、全国展開。運営会社「YES」(東京都国分寺市)は14年5月設立。資本金1000万円。