東京・池袋の都道で19年に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡し、9人が重軽傷を負った事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪に問われ禁錮5年(求刑禁錮7年)の実刑判決を受けた、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三元被告(90)が12日、東京拘置所に収容された。

健康状態を確認して刑務所に入る手続きが進められる。同元被告は、支援者を通じて「暴走は私の勘違いによる過失で、ブレーキとアクセルを間違えた結果だったのだと理解した。過失を反省するため刑に服してまいりたい」とのコメントを出した。

遺族の松永拓也さん(35)は、この日、弁護人を通じ「彼の刑事判決後の言動によって受けたショックと疲弊が大きいため、今回はコメントのみの発表とさせていただきたいと思います」と、弁護人の高橋正人弁護士を通じて文書でコメントを発表した。その中で、飯塚元被告が支援者を通じて発信した謝罪のコメントについて「本日、加害者が収監されたとの報道がありました。今回のマスコミ向けの彼のコメントでは、過失を認めたようですが、『最初からこの言葉があれば』とどうしても思ってしまいます。これから真の意味で償える日が来るかどうかは彼次第だと思います」と指摘した。

その上で「ただ、彼が収監されても、世の中から事故が無くなる訳ではありません。私は真菜と莉子の命を無駄にしたくありません。皆様にも忘れないで欲しいです。そして、未来の命が守られることを心から願っています」と交通事故撲滅への願いをつづった。

また、報道数社から、飯塚元被告からの謝罪の有無に関して問い合わせを受けたとした上で「今回の彼のコメントに謝罪の事が書かれてはいますが、そこには、公になっていない部分もあります。そのため誠実さを感じることはできませんでした」とした。その上で「一方的に手紙を送ってきたこともありましたが、その内容は事務的なもので、民事裁判の席であれば謝罪するが、そうでない限り、謝罪をしたくないご意思のようでした」ともつづった。

松永さんは、自身のブログにも同趣旨の文章をつづった。その上で「個人を攻撃し続けるのではなく、無関心でもなく、『どうすればこの様な交通事故が起きないか』を社会の皆様と考えていきたいです。なぜなら、誰しもが加害者にも被害者にも遺族にもなり得るのが交通事故だからです」と、交通事故撲滅への思いを、重ねて訴えた。

一方で「命が戻るわけでもないので気が晴れることなどは今後も無いでしょう。虚しさの方が強いです」と妻子を亡くした悲しみ、痛み、苦しみは、変わることがない現状を吐露。その上で「今後この様な事故が起きない事を願い活動は続けていきます」(コメントは全て原文のまま)と誓った。