JR東日本管内の駅弁NO・1を決める「第10回駅弁味の陣2021」の受賞駅弁当が決まり、第10代の「大将軍」には「ワインのめし」(税込み1500円、山梨・丸政)が輝いた。JR東日本が20日までに発表した。

今回は67の駅弁がノミネートし、投票期間は10月1日から11月30日。“歴代王者”を決める過去の大将軍と副将軍の中からの投票で選出される駅弁10周年記念賞は「鶏めし弁当」(同900円、秋田・花善)だった。来年1月14日から、受賞14駅弁でのイベント開催も予定されている。

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駅弁界にニューヒーローが誕生した。「ワインのめし」のテーマは、オードブル風。これまでの駅弁の概念からは外れ、極めて異例の一品だ。製造元でもある丸政(本社・山梨県北杜市)の川添洋一営業本部長(52)は「ワイン県ですので、そういったこだわりが詰まっている。お弁当とちょっと違った位置付け。ご飯は入っていないので、ワインなどアルコールを愛好する方に食していただければうれしい」と喜んだ。

今年の新作弁当だが、誕生過程も異色だった。駅弁会社の丸政とJR東日本が共同開発。山梨県の魅力をたっぷり詰め込んだ新商品実現に向け、甲府エリアのJR社員に「山梨といえばどのような料理が思い浮かぶか?」「ワインに合う山梨の食材は何か?」のアンケートを実施した。ほうとうやB級グルメ甲州鳥もつ煮、甲斐サーモンや甲州富士桜ポークなど、郷土が誇る食材を使った料理9種は魅力満載だ。

ネーミングもユニーク。食事の「ワインのご飯」の一方で、甲州弁で「ワインを飲んでいきなさ~い」を意味する「ワイン飲めし」の方言も盛り込んだ。武田信玄生誕500年の節目の年に、山梨県で初めて「大将軍」の称号を得た丸政の川添営業本部長も「駅弁はコンビニ弁当との差別化が大事。地域にこだわった駅弁を、今後も作り続けないといけない」と、さらなる使命感を燃やした。

票を投じた50代男性は「ワインのための駅弁というのが今までになく、とても面白い発想」。50代女性も「1つ1つのおかずが味わい深く、とてもおいしい」と評価した。

総合結果は、駅弁の「味」「盛付」「掛け紙」の3項目を4段階で評価し、その平均値に駅弁ごとの投票数を加味して算出した値。総合2位に当たる副将軍には、にしんと数の子が魅力的な「にしんめし」(新潟)が選出された。今年の新作を対象とした初陣賞には東北6県の美食を盛り込んだ「東北福興弁当~未来へのきざはし~」(宮城)が受賞。フランスの駅構内でも販売を開始して好評な「鶏めし弁当」(秋田)が歴代キングの座に就いた。【鎌田直秀】

◆ワインのめしメニュー 上段左から(1)チーズケーキとレーズンパン(2)甲州フジザクラポークのかつサンド(3)ワインきの子と小エビのアヒージョ、中段左から(4)甲州鳥もつ煮(5)甲斐サーモンのマリネ(6)牛肉炭火焼き白ワイン仕立て、下段左から(7)ドライフルーツと月の小石チョコレート(8)甲州地鶏テリヤキチキン(9)甲州ほうとうグラタン

<14駅弁が集結するアフターイベント「宴」の開催も決定>

総投票数の3万6454票は、昨年の投票数より1万4000票以上増え、過去最多だった。67種類に上った駅弁のエントリー数も最多。JR東日本の企画担当者はイベントへの参加を感謝するとともに「駅弁文化を絶やしてはいけないとの思いで、コロナ禍においても『駅弁味の陣』を開催してきた。10周年の区切りを迎え、さらに『この駅弁が私の1番』『またこの駅弁が食べたい』と、次の10年につなげてまいります」と使命感をにじませた。

受賞した14駅弁が集結するアフターイベント「宴」の開催も決まった。期間は22年1月14日から2月13日までだが、開催場所は検討中。今後、同社ウェブサイトで公表する。味覚賞の「海苔のり弁887」(福島)、盛付賞の「まさかいくらなんでも寿司」(新潟)、掛け紙賞の「トンかつ弁当」(千葉)など、五感で楽しめる逸品がズラリ勢ぞろい。あなたが食べたいNO・1駅弁は決まりましたか?