青空の広がった週末の土曜日となった2日、桜の名所、東京・上野公園には大勢の人が訪れた。

肌寒い風が吹き抜けたこともあり、コートにマフラー姿も多く、散り始めた桜に合わせて軽やかなカーディガンの人からは「ちょっと冷えるねぇ」などの声もあがっていた。

上野公園では、今も続くコロナ禍の状況を踏まえ、桜の木の下での宴会行為は禁止すると張り紙や看板などで訴えている。桜の並木道では進行方向を指示し、ほぼ一方通行にして来園者が向き合うことを避けるようにしていた。

園内では大きなビニールシートを広げた宴会はほとんどみられなかった。それでも、3~4人の少数のグループが小さなシートを広げて、缶ビールなどをチビリチビリと飲む姿は散見された。それらのグループに対しては、園内の警備員が「長い時間の滞在はご遠慮ください」と小さな声で優しく声を掛け、撤収を促していた。

仲間3人と訪れ、缶チューハイやノンアルコール飲料などで談笑していた28歳の男性は「宴会ができないことを良く思わない人もいるかもしれないけど、コロナ禍だから仕方ないし、咲いた桜を楽しむ方法をみんなそれぞれ折り合いをつけて楽しんでいるんじゃないですか」と立ち止まらずに桜を見上げる花見の方法に理解を示していた。

これまで、宴会式の花見を楽しんできた60代の夫婦は「まだ、コロナは怖いからね。ワクチンを打っていてもどんちゃん騒ぎをしていれば、感染する人も増えそう。いいんじゃないですか、この落ち着いた雰囲気は悪くないよ」と風に舞い散るサクラの花びらをまぶしそうに見つめていた。

上野公園内で営業する老舗上野精養軒では開業150年を記念して、3月18日から駐車場の一部にテーブルとイスのセットを設置して、パンダのイラストをほどこしたキッチンカーを出して軽食やビール、イチゴの入ったスパークリングワインを販売しており、行列ができていた。1日は晴天に恵まれ平日にもかかわらず約300人が訪れたという。秋元秀夫総支配人は「今までガランとしてた駐車場が人で埋まりました。お客さんに喜んでもらえてうれしい限り。今までやったことない営業方法でしたが、これまでご縁のなかった若い方々にもご利用いただいた。チャレンジしてよかった」と話した。

園内には分別のゴミ箱も設置していたが、コロナ禍前に樹下でシートを広げた宴会が大盛況だったころは山のようにゴミが集積されていたが、今春はゴミ箱があふれるようなことはない。上野観光連盟の二木忠男会長は「(上野動物園で)双子パンダが産まれた影響なのか、おかげさまでアメ横にも多くの方々にお越しいただいた。コロナ禍だから仕方ないかもしれないが、サクラへの対応も新しい花見様式が求められているように感じます」と冷静に語っていた。【寺沢卓】