藤井聡太棋聖(竜王・王位・叡王・王将=19)に永瀬拓矢王座(29)が挑戦する、第93期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負第1局が3日午前9時から、兵庫県淡路市「ホテルニューアワジ」(産経新聞社、日本将棋連盟主催)で行われた。対局は午後4時17分、千日手が成立。先手後手を入れ替えて30分後の午後4時47分から始まった指し直し局も、午後5時38分に千日手となり、先後を入れ替え、再度指し直し局となった。午後6時8分からの再指し直し局は後手の永瀬が午後9時42分、114手で制し、先勝した。

「ひふみん」こと加藤一二三・九段(82)の「ひふみんアイ」をお届けします。

   ◇   ◇

最初の千日手が成立した対局を見て、かすかに藤井棋聖の雲行きがおかしいと思いました。弱気でしたので。指し直し局の千日手はやむを得なかったでしょう。

私の経験則から言って、先手で千日手にされて指し直しはまずい。逆に後手番で千日手にして先手で指し直しなら、勝っている例が多いのです。1982年(昭57)の名人戦第7局は後手で千日手となり、指し直しで先手になって名人を獲得しましたから。

ただ、この対局は再指し直しでも、藤井棋聖の桂馬を跳ねた攻めが無理筋でした。それと、我慢をして守備陣に桂を打つ場面で、攻防の角を打ち込みましたが、結局取られて攻めに使われてしまいました。ミスにつけ込まれました。

終盤まで持ち時間が2分に対し、永瀬王座68分という差が大きかったです。しかも、攻めている局面なら指し手が見えやすく、持ち時間がなくても大丈夫ですが、受けの局面ではあれこれ考えなくてはならず、苦しいですから。

永瀬王座とは現役時代に戦っていますが、若手の中でも1、2を争うくらいグンと強くなったと思います。初顔合わせのタイトル戦では、5番勝負であろうが7番勝負であろうが関係なく、先に1勝するとホッとして、自信も出てくるというもの。短期決戦の5番勝負、面白くなってきました。

【関連記事】藤井聡太棋聖は黒星発進 千日手2回の“死闘”永瀬王座に敗れタイトル戦連勝「13」でストップ