長野選挙区(改選数1)は、激しい選挙戦となっている。立憲民主党現職の杉尾秀哉氏(64)に対し、自民党は新人でタレントの松山三四六(さんしろう)氏(51)を擁立した。改選数が2から1となった2016年(平28)以降、昨年4月の補欠選挙も含めて事実上の「与野党1対1」の構図が3回続いてきたが、今回は日本維新の会新人の手塚大輔氏(39)ら計6人が立候補し、図式が変わった。実績の現職対タレントの人気・知名度の議席争いに、他候補が加わり、どんな審判が下るのか。

「厳しいが、負けられない」「くらしと命、平和を守る」を打ち出す杉尾氏と陣営は、警戒感を隠さない。理由は2つ。

「立民への逆風」「ライバルの正体が知れない」

6年前、杉尾氏は全国に先駆けた民進党・共産党・社民党の野党統一候補として出馬。「落下傘候補」と批判されながら自民現職に7万票以上の差をつけ、57万票以上を獲得して初当選した。今回も共産、社民と政策協定を結び、国民民主党も4月に設立された県連が杉尾氏支援を決め、共闘の「長野方式」で再選を目指す。

ただ、昨年10月に共闘で挑んだ衆院選では敗れた。長野の一昨年暮れ、非自民の保守層の調整役だった羽田雄一郎参院議員が死去。共産との共闘に難色を示す層もあり、保守層離れが指摘された。それでも、国民民主に近い政治団体「新政信州」、護憲団体などからなる「信州市民連合」の支持も得て、引き締めを図ってきた。

杉尾氏は「1期6年、県内77市町村を回って約22万キロ走り、現場に足を運んで声を聞いてきたのが強み。それでもまだ問題は残っている。もう6年やらせてほしい」と支持を訴える。これまでは事実上の一騎打ちの構図の中で、リベラル層から非自民党の保守層まで広い支持を集めたが、今回は維新も含め、6人が出馬。構図は一変している。

補選も含めて直近の参院選長野選挙区で3連敗中の自民は、松山氏の知名度にかける。長年、長野でテレビやラジオを中心に活躍。「1、2の三四六。松山三四六」の掛け声で、イメージ戦略に出る。ローカルタレントとして地域に親しまれてきた人気は根強い。公示日には芸能界で師匠と仰ぐ歌手の松山千春(66)が応援に駆けつけ、「もう1度、長野に来ます」と公言。これまで以上の浮動票も視野に入る。

第三極を狙う維新の手塚氏は「教育と出産の無償化」などの社会保障の充実を訴え、こちらも浮動票の受け皿になりえる状況で、県政界関係者は保守層が一定程度、手塚氏に流れる可能性があるとみる。

低投票率が予想され、中央では野党の足並みにずれが出る中での4度目の「長野方式」。実を結ぶのか。浮動票の行方が鍵になりそうだ。【赤塚辰浩】