ノンフィクション作家の下山進氏が、28日発売の週刊誌「サンデー毎日」で最終回を迎える連載コラム「2050年のメディア」が、翌週7月5日発売の「週刊朝日」7月15日号に“引っ越し”第1回の連載をスタートする。28日、朝日新聞出版が発表した。連載のテーマやスタイルはこれまで通りで、雑誌の連載がタイトルを変えずに他誌に移るのは極めて異例だ。

「2050年のメディア」は、20年3月に「サンデー毎日」で連載を開始。米誌「ニューヨーク・タイムズ」や英誌「エコノミスト」など、いち早くデジタル時代に適応する変革を成し遂げた海外メディアの先進的な事例を紹介。一方で、捜査機関が強制捜査などに着手することを事前に報じる「前うち報道」に固執する、日本の大手メディアの姿勢を鋭く批判。資源の制約がある中で改革に奮闘する地方紙の姿なども取材し日々、劇的に変わっていくメディアをめぐる状況を多角的な視点から浮かび上がらせてきた。「サンデー毎日」では第113回をもって最終回を迎える。

下山氏は「週刊朝日」に“引っ越し”始まる新連載について

「近年はポジションを決めた報道や言説がとみに多いのですが、『真実は多面体』ということを忘れたときに、ジャーナリズムは大きな間違いを犯します。『発見』なくしてジャーナリズムなし。新連載では、メディアというプリズムを通じて、サイエンス、ジェンダー、国際情勢、ベストセラーの舞台裏、作家が筆を折るときなど、広範なテーマでの『発見』を読者と共有していきたいと考えています」

と抱負を語った。

また「週刊朝日」の渡部薫編集長は

「『サンデー毎日』さんからバトンを受け継ぎ、下山進さんの連載を始められること、大変光栄に思っています。社会のデジタル化に伴い、メディアやジャーナリズムをめぐる環境は近年、激変しています。下山さんは緻密な取材を元に、報道各社が時代の変化に適応しようと試行錯誤する内幕を描き出してきました。その1つ1つが人間味あふれるストーリーになっていて、毎回、引き込まれるコラムです。読者の皆さんにお楽しみいただければ幸いです」

と、異例の“引っ越し”連載の今後に期待した。

◆下山進(しもやま・すすむ)1993年(平5)コロンビア大ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。「文藝春秋」で長くノンフィクションの編集者をつとめた。上智大新聞学科非常勤講師。18年から慶大総合政策学部特別招聘(しょうへい)教授として「2050年のメディア」をテーマにした調査型の講座を開講、その成果を翌19年「2050年のメディア」(文藝春秋)として出版。著書に「アメリカ・ジャーナリズム」(丸善、95年)、「勝負の分かれ目」(KADOKAWA、02年)、「アルツハイマー征服」(同、21年)、「2050年のジャーナリスト」(毎日新聞出版、21年)。