参院選香川選挙区(改選定数1)は野党共闘が成立した19年参院選から一転、過去最多の8人による乱戦となっている。

香川は、映画「なぜ君は総理大臣になれないのか(なぜ君)」(20年)に登場する立憲民主の小川淳也政調会長(51)、国民民主の玉木雄一郎代表(53)の地元。それぞれ独自候補を擁立し、選挙戦では両者のメンツをかけた戦いに発展している。注目選挙区を追った。

「物価高の状況は政治の責任。岸田さん(首相)に今の政治の流れを変えてくださいというのは無理だ。これだけ国民生活が逼迫(ひっぱく)しても、反応が鈍い」。3日、高松市で立憲新人、茂木邦夫氏(35)ととともに街頭に立った小川氏は政権を批判した。演説後、報道陣の「なぜ、分裂したのか」の問いかけに「分裂していることは本当に申し訳なく思っている。野党票の分散で政権与党があぐらをかくことにつながりかねないことに責任を感じている」と語った。

国民民主が22年度予算に賛成したのも「分裂」の1つの理由になった。小川氏は「この際、与党なのか野党なのか、はっきりされたほうがいい」とチクリ。

小川氏と玉木氏は地元の名門・高松高校出身。小川氏が玉木氏の2年後輩。いずれも東大に進み、中央官僚から国会議員になった。ともに県内の野党を引っ張ってきた自負がある。

6月29日に公示後初めて国民新人、三谷祥子氏(55)の応援のため地元入りした玉木氏は「対決より解決。これしか日本を良くする道はない」と訴えた。

共産党、日本維新の会も割って入る。共産新人、石田真優氏(40)は「今回の選挙は平和と市民の暮らしがかかっている」と訴える。維新新人、町川順子氏(63)は「自民でも他の野党でもない、維新がある」と浸透を図る。

岸田政権で内閣官房副長官を務め、3選を目指す自民現職の磯崎仁彦氏(64)の陣営関係者は「乱立は、野党の票が分散するだけ」とほくそ笑む。2日に三豊市で行われた個人演説会。「国政に送っていただくとともに、香川県で岸田政権の信任をどれだけ得ることができるのかの選挙だ」。磯崎氏の訴えには余裕がある。【松浦隆司】