奈良市内で参院選の街頭演説中に安倍晋三・元首相(67)が銃撃され、死亡した事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された元海上自衛官の無職山上徹也容疑者(41)が派遣社員として勤務していた京都府内の工場の責任者が9日、奈良市内で報道陣の取材に応じた。

事件発生後、社員から聞き取り調査した結果、工場内で同僚やトラックのドライバーとトラブルを起こしていたことが分かった。20年10月から今年5月までフォークリフトで倉庫の荷物を運ぶ仕事をしていた。

退職直前の今年3月、同僚が作業の手順違反を指摘すると、口論になり、山上容疑者が同僚に「そしたら、おまえ、やれや!」。自己流の積載方法をごり押し、年上の50歳のベテランと口論になったという。普段の会話は、ですます調だったが、あまりの急変ぶりに責任者は「自己中心的にわがままな性格が露呈してきていた」と証言した。同僚とのトラブル後、体調不良を理由に欠勤が増え、退社した。

今年1月ごろには、外部のトラックのドライバーと荷物の積み込みでトラブルが発生していた。運送会社からは「山上を外してくれ」と口頭の申し入れがあった。会社では仕事以外の会話をすることはほとんどなく、LINE(ライン)で友達としてつながっている社員もいなかった。

山上容疑者は1999年に奈良県内有数の進学校である県立高校を卒業した後、03~05年、海上自衛隊に所属。今年5月に京都府内の工場を退職した。高校の同級生らは「名前すら覚えていない」と証言。同級生の娘がいる母は「(娘は犯人と)親しかったからではなく、高校時代はいい思い出だったので、こうなった(同級生からこんな犯人が出た)ことにショックを受けている」と話した。山上容疑者の実家は奈良市内にあり、現在は母親が1人で暮らしている。【松浦隆司、鎌田直秀】

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