日本テレビの人気番組「笑点」の大喜利メンバーで、落語家の三遊亭円楽さん(本名・会泰通=あい・やすみち)が、肺がんのため72歳で亡くなってから2週間が過ぎた。生前、円楽さんが足しげく通ったパン屋がある。自宅の近く、東京都江東区にある「ナカヤ」で、円楽さんはたくさんのパンを買い込んで、共演者の差し入れにしていた。15日、師匠と縁深いパン屋さんに足を運び、思い出話を聞いた。

店は3代、約80年続く。2代目夫人の中山光子さんは、12日に円楽さんの自宅を弔問したといい「線香を上げに行かせていただきました。いっぱいのお花に囲まれていましたよ」と回想。「長いことありがとうございました」と感謝を伝えたという。中山さんが円楽さんと最後に会ったのは8月ごろ。円楽さんが肺炎で再入院する前、病院で偶然見かけた。中山さんは「円楽さんが『よう、久しぶり』って手を振ってくれて。『まだ死なないよ。生きているよ』と声をかけてくれました」と気さくな人柄を振り返った。

店にはきれいな焼き目がついた菓子パンや総菜パンが並び、バターの香りが広がっている。円楽さんは約25年前から行きつけで、週に1度は来店していたという。円楽さんのお気に入りは自家製のあんがたっぷり入った「こしあんぱん」と「小倉あんぱん」(ともに税込216円)。笑点の収録の際には、他のパンと合わせて計60個以上を購入し、メンバーやスタッフに配っていたという。中山さんは「円楽さんは見かけより、本当に気持ちが優しい人でした」と話した。落語家の立川志らく(59)は新幹線車内で笑点メンバーと鉢合わせした際、会話もなく気まずい雰囲気を察した円楽さんが「お前も食べるか?」と、あんぱんを手渡され、涙が出るほどうれしかったという。

中山さんは「(林家)たい平さんが円楽さんが入院している時に、テレビでよく『パンが食べたいな』って言ってくれて、何回か円楽さんの代わりに差し入れをさせてもらった」と振り返った。続けて「これで縁が切れちゃうのは申し訳ないから、たまには差し入れに行こうねって店で話をしています」と語った。【沢田直人】