将棋の羽生善治九段(52)が18日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で通算1500勝の特別将棋栄誉敢闘賞を将棋界で初めて受賞した。今年6月16日の順位戦B級1組1回戦で山崎隆之八段(41)に勝ち、前人未到の大記録を51歳8カ月、1985年(昭60)12月のデビューから36年5カ月で達成した。同日行われた第48回「将棋の日」表彰・感謝の式典の中で、表彰された。

17日には第48期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント(挑決T)決勝で佐藤天彦九段(34)に敗れたばかり。対局翌日にもかかわらず、疲れも見せずに式典に臨んだ。終了後には、「棋士を長きにわたって続けてきた道のりを実感することができた」と語った。

21年度は14勝24敗と、棋士人生で初めて負け越した。名人9期獲得も含め、29期連続して在籍していた順位戦最上級のA級(プロサッカーJリーグで言えば「J1」)から1ランク下のB級1組に陥落した。「内容が非常に悪かった。それが結果に反映されてしまった。今までと違うことをやっていく必要はあるが、どうやっていくかは模索し続けているところ」とした。

転換点は自身でもよく分かってはいないが、本年度は20年竜王戦以来のタイトル戦登場まで手の届く位置にいる。模索するなかで、新しい可能性を見いだすこともあるという。「何百局と前例がある形でも鉱脈はある。可能性の大きさを感じています。そのなかで、自分自身レベルアップしていければ」と話す。

渡辺明棋王(名人=38)への挑戦権を争う棋王戦は17日の敗戦で、敗者復活戦に回った。準決勝敗退組の藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)と伊藤匠五段(20)の勝者を下し、「敗者復活組代表」として挑戦者決定戦に進出。挑決Tを制して待ち構える佐藤天九段に連勝できれば、挑戦権獲得となる。

藤井王将への挑戦権を争う、第71期ALSOK杯王将戦の挑戦者決定リーグ戦は「マジック1」。22日の豊島将之九段(32)に勝てば決定だ。「豊島さんはここ数年、安定して活躍を続けられているし、タイトル戦の常連。私にとって厳しい状態が続いているが、せっかくの機会ですので、気力を充実させて向かっていけたらいい」と抱負も語った。

現在、タイトル獲得通算99期(竜王7、名人9、王位18、王座24、棋王13、王将12、棋聖16)。100期を期待する声も大きい。「ここ数年、出る機会すらない状態。自分自身の実力を充実させることが何よりも最初にやらなくてはいけないかなと思います。続けていくなかで、結果として達成できれば非常にうれしい。まだ、その段階には到達してないので、もう1段、2段とレベルアップしたい」と意欲的だった。

◆羽生善治(はぶ・よしはる)1970年(昭45)9月27日、埼玉県所沢市生まれ。故二上達也九段門下。85年12月、加藤一二三・九段、谷川浩司九段に続く3人目の中学生棋士として、プロ(四段)に。89年12月、タイトル戦初挑戦の第2期竜王戦で、当時の史上最年少記録の19歳3カ月で初タイトル。94年、初の名人。96年の第45期王将戦で谷川から王将を奪い、将棋界史上初の7冠全制覇。18年2月、囲碁の井山裕太現本因坊とともに国民栄誉賞。タイトル獲得通算99期と通算1514勝(662敗)は歴代1位。