サッカーのFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本代表がコスタリカに0-1で敗れた27日、代表戦後にはサポーターが集結する東京・渋谷のスクランブル交差点は、この日ばかりは沈黙した。初戦でドイツに逆転した23日は、日付けが変わった深夜0時を過ぎても、横断するたびに歓喜のハイタッチをかわし、ニッポンコールを連呼するなど大騒ぎだった。今回も、酔って大声を出したり、車道を歩いて警察官に歩道へ戻るように促される光景もあったが、ほんの一握り。連勝を期待した分、落胆した人も多いのか、静かに整然と横断していた。

日本代表の攻撃陣とは裏腹に、ハーフタイム直後から稼働し始めた「DJポリス」をはじめ、総勢100人あまりの警察官が機能した。青信号になると、「今日は斜め横断の制限をかけています。警察官の持っている黄色のテープの内側を左側通行でお進みください」と呼びかける。点滅し始めると、「まもなく信号が赤に変わります。これからの無理な横断はご遠慮ください」と、笛を鳴らして早く渡らせようとした。ドライバーに対しても配慮は怠らない。「警察官の整理に従って、車を安全に進めてください」と事故防止への協力をお願いした。

今回は、日曜日午後7時からのキックオフに加え、勝てばリーグ突破が限りなく現実に近づく大一番。初戦にもまして注目度は高く、群衆の輪も次第に大きくなっていった。

ドイツ戦をはるかに上回る数の群衆を想定した警視庁では、試合開始直前からスクランブル交差点の周辺に、警察関係の車両が続々と集結。「君が代」が流れている間も着々と準備を進めていた。

日本代表の敗戦で「大騒ぎ」は封印され、日常と何ら変わりない渋谷の風景。試合終了から約1時間後の午後10時10分、警察車両はすべて撤収するスピード決着だった。【赤塚辰浩】