藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が年度内6冠へ望みをつないだ。29日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で行われた、第48期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント(挑決T)敗者復活戦1回戦で午後6時51分、135手で伊藤匠五段(20)を下した。渡辺明棋王(38)への挑戦権を目指して12月8日に同所で行われる敗者復活戦では、来年の王将戦7番勝負で挑戦を受ける羽生善治九段(52)と対戦する。

後手伊藤の攻めを逃れ、先手玉がスルスルと敵陣に入る。藤井には珍しい入玉将棋。「しのげるかどうかという局面が長かった。最後は読み抜けがなければ大丈夫だと思いました」。

今年9月11日に放送された、NHK杯トーナメント2回戦以来の伊藤との同学年対決。「楽しみにしていた」という対局は、ベスト4以上は敗者復活戦があり、2敗したら失格となる独自システムの棋王戦だった。藤井は準決勝で佐藤天彦九段(34)、伊藤は羽生に敗れている。ここで負けたら終わりのサバイバル戦で、第1関門を突破した。

次には羽生が待ち構える。デビュー1年目の非公式戦で初めて対局して勝った。「タイトル戦の舞台で対戦してみたいと思っていました。自分が挑戦を受けるという形は、全く思っていなかったですが」と笑う。

年度内6冠に向け、棋王戦初の挑戦権獲得には3連勝が条件となる。「まだ挑戦という感じではありません。全力を尽くせればと思います」。竜王戦防衛戦、A級順位戦も含め、慌ただしい師走が始まる。【赤塚辰浩】

◆棋王戦挑戦者決定トーナメントはベスト4以上は、敗者復活戦がある「2敗失格」システム。準決勝で羽生に敗れた伊藤と佐藤天に敗れた藤井が1回戦を行い、藤井が勝利。決勝敗者の羽生は、藤井と「敗者組」の挑戦者決定戦進出をかけて戦う。これに勝てば、佐藤天と挑戦者決定戦(挑決)で戦う。挑決は変則2番勝負で、佐藤は1回勝てば挑戦権獲得。敗者組(羽生か藤井のうち勝者)は2連勝が条件となる。