上野愛咲美女流棋聖(女流立葵杯=21)への挑戦権を目指す、囲碁のドコモ杯第26期女流棋聖戦挑戦者決定戦、仲邑菫三段(13)対藤沢里菜女流本因坊・女流名人(24)戦が8日、東京・市ケ谷「日本棋院東京本院」で打たれた。対局は241手までで仲邑が黒番(先手)中押し勝ち、この棋戦でうれしい初めての挑戦権を獲得した。上野との挑戦手合3番勝負第1局は来年1月19日、神奈川県平塚市「ホテルサンライフガーデン」で行われる。

「堂々の勝利です。完勝に近い」。観戦していたナショナルチーム監督の高尾紳路九段(46)が思わずうなった。

女流囲碁界の第一人者にチャスすら与えず、スキありと見たらスパッとつぶしにかかった。「強い相手なので、挑戦は意識せず、自分の力を出し切れればと思いました」

藤沢とは1勝3敗。初対決となった今年4月のSENKO CUPで敗れ、同月に初のタイトル挑戦となった女流名人戦3番勝負で2連敗した。7月の扇興杯準決勝で初白星を挙げている。それ以来の対局で、会心の勝利を挙げた。「女流名人戦の時は強さを全然、感じなかった。ここ3カ月くらいで、目を離した隙に強くなっている」(高尾九段)。

3年前のデビュー時から、この棋戦の予選は突破して本戦入りを果たしているが、ベスト8が最高。今期は予選で桑原陽子六段に勝って本戦入りを決めると、本戦1回戦で佃亜紀子六段、同準々決勝では7月の扇興杯決勝で敗れた牛栄子扇興杯、準決勝では向井千瑛六段をそれぞれ下した。「牛先生に終盤、逆転で勝ちを拾えたのが大きかったです」と、ターニングポイントにした。

昨年は自己最多の43勝。今年はこれを上回る46勝だ。しかも、女流名人戦挑戦、扇興杯準優勝、女流本因坊戦本戦ベスト4とコンスタントに結果を残している。「強さは本物です」。日本棋院理事長の小林覚九段(63)も成長ぶりを認めた。

タイトル戦で初めてぶつかる上野愛は今年、広島アルミ杯若鯉戦で初めて連覇を達成した。強烈な「ハンマー」が持ち味だ。これまで1勝4敗。唯一の勝ち星は、今年の女流名人リーグで挙げている。「実力差はだいぶあります。別の手段を用意できるほどの力がないので、ハンマーを食わないようにうまくかわせたらいいな」。終局後の会見で笑った。

女流名人戦では初戦を落とした後、気持ちを切り替えることができずに連敗した。「負けても落ち込まずに切り替えたいと思います。タイトルは意識せず、内容のいい囲碁を打ちたいです」。

今年の活躍について、仲邑は漢字1文字で「夢」と表現した。早ければ13歳10カ月で初タイトル獲得となる。2014年(平26)の第1回会津中央病院杯(現在の女流立葵杯)で藤沢が達成した、15歳9カ月の史上最年少記録を上回る。

藤沢・上野の女流2強の歴史は動くか。夢への舞台は用意された。