国民栄誉賞棋士・羽生善治九段(52)が藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)に挑戦する、将棋の第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第2局が22日、大阪府高槻市「山水館」でで行われた。21日午前9時からの2日制で始まった対局は、先手の羽生が積極的に仕掛けて流れをつかんだ。22日午後5時56分、101手で快勝して、対戦成績を1勝1敗とした。第3局は28・29日、金沢市「金沢東急ホテル」で行われる。

本紙「ひふみんアイ」でおなじみ、加藤一二三・九段(83)が対局を振り返ります。

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藤井王将が終盤、7筋に打ち据えた飛車が不可解でした。自然に戦うなら9筋に打ちますから。プロは易しい手を間違えますが、それにしても「らしからぬ」手でした。通算365回目の対局で初めて見ました。

対する羽生九段はノーミスの会心譜。これが今局の明暗です。

初日に藤井陣の8筋に打ち込んだ金が「驚きの一手」とされているようですが、これは正確に対応した「盤上この一手」。次の飛車打ちを見た、敵陣攻略の狙いがあります。よく勝負に持ち込んだと思います。さらに感心したのは、5筋に打った2枚の銀。1枚目で天王山の馬を下げ、2枚目で玉頭を埋めました。「専守防衛」の曲線的な羽生流の指し手です。

私にとって「営業部長」と称する銀はもっぱら攻め駒ですが、今局の銀は、会社を固める「総務部長」といった感じでしょうか。羽生九段の経験値に「一日の長」があったと思いますね。

これで1勝1敗。藤井王将はどう立て直してくるか。羽生九段は1局目の一手損角換わりといい、今局の相掛かりといい、作戦的には成功とみていいでしょう。特に、一手損角換わりは改良の余地があります。第3局以降、どんな戦法を採用するか注目です。(加藤一二三・九段)