新型コロナウイルス感染が原因で欠席した授業について、救済措置をとられず降年(こうねん)決定されたのは不当だとして、提訴していた東京大教養学部理科3類の杉浦蒼大さん(20)が30日、東京地裁で会見した。杉浦さんは、東大に2年から1年への降年決定されたことについて、取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁が26日、訴えを却下した1審東京地裁判決を破棄、審理を地裁に差し戻すとされた。

昨年9月の東京地裁の1審判決は、降年決定されたのは大学の処分ではなく「単位を取得できなかった結果であり、司法審査の対象にはならない」と口頭弁論も行われずに却下された。対する東京高裁では、降年処分され、医学部への進学ができなくなったことで杉浦さんへの不利益が生じており、東大の処分が違法であると判断し、口頭弁論の実施などを含めて地裁判断を却下して26日に差し戻した。

杉浦さんは取材に対し「8月に降年が決まってから5カ月、何もできなかったが、ようやく審理される。率直な気持ちとしてうれしいです」と話した。弁護人の井上清成弁護士は「高裁が何も審理しなかった地裁の判断を差し戻したのは極めて異例。東大には当時の杉浦さんがコロナで身動きが取れなかったことを考慮して勉学できる環境について真剣に考えてもらいたい。東大は私の母校でもあるので」と話した。

この杉浦さんの東大による降年決定を巡っては、昨年8月5日に東大がホームページ(HP)で「(杉浦さんが)コロナで重篤な症状であると虚偽の訴えをした」との主旨のコメントを掲載(現在は削除)。東大のコメント掲載が侮辱罪に当たるとして杉浦さん側が警視庁本富士署に刑事告訴をしている。

今月25日には本富士署の「担当署員」から杉浦さんの携帯電話に「東大を告訴することに何の意味があるのだ」との連絡を受けていた。井上弁護士から本富士署長宛てに「以後このような電話を杉浦さんにしないように」と厳重抗議をしたという。その2日後の27日に告訴は受理された。

井上弁護士は「地裁にしても本富士署にしても、なんらか東大に対する忖度(そんたく)が存在したとしか思えない。最終的には杉浦さんが残りわずかな今年度のうちに足りない2講義分の補講を修了して、早ければ今年4月から3年生として医学部に進学できるようにしたい」と述べた。