全国各地で相次ぐ広域強盗を「ルフィ」などと名乗って指示した疑いがあり、フィリピンの入管施設で拘束中の渡辺優樹容疑者(38)ら4人が関わったとされる特殊詐欺の被害額が、60億円以上であることが2日、分かった。警察庁の露木康浩長官が明らかにした。

4人はリーダー格という渡辺容疑者のほか、今村磨人(38)、藤田聖也(38)、小島智信(45)の3容疑者。関与が疑われる特殊詐欺を巡っては、フィリピン当局が19年11月に36人を拘束。20年2月~21年7月に日本に移送され逮捕された。この他のグループのメンバーも含めると、摘発された容疑者は約70人となる。

警視庁がこのグループによる被害として1月末に明らかにした約35億円は、これまでの捜査で被害者が確認できた18年11月~20年6月ごろまでの約2300件分。被害者が特定できていない事件も含めると、総額は60億円に上るという。警視庁は、窃盗容疑で4人の逮捕状を取得し強制送還を要請していた。

一方、渡辺、小島両容疑者の刑事裁判の審理が2日、マニラの裁判所で開かれた。同国は「係争中の人物は強制送還できない」としており、容疑者らが送還を避けるため虚偽の告訴をさせた疑惑がある。検察側は棄却を申し立てたが、即日棄却にはならず、7日に次回審理が行われることになった。両政府は来週にも一斉送還する方向で調整しているが、不透明な状況となった。8日に始まるマルコス大統領の訪日までの解決を目指していたレムリヤ法相は2日、4人のうち2人を先行して送還する可能性があると述べた。

両容疑者の弁護人によると、2人はオンラインで裁判に参加。証人が出席して審理を継続したという。送還などをめぐる様子については「自身に向けられた疑惑の全てにストレスを感じ、当惑している」などと指摘した。渡辺容疑者はフィリピン人の「元妻」に暴行したとして告訴された。裁判期日は検察側の要求で、16日から急きょ前倒しされた。