藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が史上最年少6冠を目指して渡辺明棋王(38)に挑戦する、将棋の第48期棋王戦コナミグループ杯5番勝負第1局が5日、長野市「長野ホテル犀北館」で行われる。対局前日の4日、両者は現地入り。対局場の検分を行った後、記者会見、開幕式に参加した。

昨年の獲得賞金と対局料が1億2205万円と、デビュー6年目で初の1億円超えを果たして「賞金王」(2位は渡辺の7063万円)となった藤井は、棋王戦初登場。「賞金のことは知りませんでした。タイトル戦の挑戦者になるのは(昨年の王将戦以来)久しぶり。新鮮な気持ちもあります。5番勝負を盛り上げられれば」と、会見で話した。

挑戦者決定トーナメントでは準決勝で佐藤天彦九段に敗れたが、「ベスト4以上は2敗で失格」という独自のルールで敗者復活戦に回った。1つも負けられない状態から勝ち上がり、初の挑戦権を獲得した。過去20年、敗者復活戦から勝ち上がって挑戦権を獲得し、そのまま棋王を獲得したのは4人いる。28期の丸山忠久、30期羽生善治、32期佐藤康光、34期久保利明。いずれもタイトル獲得経験者ばかりだ。藤井が5人目を目指す。

今月からは初防衛を目指す王将戦とかけ持ちになる。さらに渡辺名人への挑戦権を争うA級順位戦など、重要な対局が重なる。「充実感があります。6冠という意識はなく、いいパフォーマンスをお目にかけられればと思います」。

渡辺との過去の対戦成績は12勝2敗と分がいい。とはいえ、「1局ごとに緻密に戦略を立ててこられる」と警戒を怠らなかった。

対する渡辺は棋王戦10連覇中。第43期と第47期に登場した永瀬を除き、違う対戦相手すべてを下している。昨年、藤井に奪われるまで王将戦は3連覇するなど、冬場のタイトル戦で強さを発揮する「冬将軍」だ。

藤井との頂上対決は約1年ぶり。「1年1年すごみを増している感じ。対戦を続けていた時とは違った感覚で指すことになる」とした。同時に「これまであまりいいところがなかった。もう少しできたんじゃないかという気持ちと、今回はいいものを見せなくちゃという気持ち」と自らを奮い立たせるように語っていた。【赤塚辰浩】