酪農指導団体である一般社団法人中央酪農会議(東京)が日本の酪農家157人を対象に「日本の酪農経営実態調査」を行い、日本の酪農家の8割以上が赤字経営、6割が離農を検討しながら強い責任感で経営を継続していることが分かった。

経営する牧場の過去1カ月の経営状態を聞くと、全体の84・7%が「赤字」と答え、「借入金がある」と答えた人が86・0%、その7割近くが「1000万円以上」(66・7%)と答えた。

経営への打撃要因は「飼料価格の上昇」(97・5%)が最も多く、「子牛販売価格の下落」(91・7%)、「燃料費・光熱費の上昇」(85・4%)と続く。経営悪化によって受けた影響は「将来に向けた牧場の投資の減少」(68・8%)や「借入金の増加」(58・6%)にとどまらず、2割が「牛の飼育頭数の減少」(21・0%)と答え、酪農農家の経営基盤が大きく揺らいでいることがうかがえる。

悪化する経営状況による精神的苦痛としては「経営環境が改善する目途が見えない」(81・5%)がトップで、「借入金が増えること」(60・5%)や「生まれた子牛が売れない」(45・2%)と続き、経営継続のために今後望むこととして「飼料価格の抑制」(91・7%)、「生乳販売価格の上昇」(89・2%)、「子牛販売価格の上昇」(77・7%)を挙げた。

酪農経営を続ける中で離農を考えた経験を聞くと、24・8%が「よくある」、33・1%が「たまにある」と答え、合わせて6割が離農を検討したことが分かった。それでも経営を続ける理由は「自分自身・家族の生活を維持するため」(85・4%)、「借金を返済するため」(64・3%)に加え、その半数が「日本の食の基盤を維持するため」「飼育している牛に愛着があるため」(ともに50・3%)と答え、強い責任感に支えられていた。日本農業研究所の矢坂雅充研究員は「日本の酪農のためには、長期的なビジョンと消費者のみなさんの理解が不可欠」と話している。