日本将棋連盟会長の佐藤康光九段(53)が4日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で会見を行い、役員予定者予備選挙には立候補せず、今年6月の任期をもって退任と発表した。今年に入り、「次の人に託すのがいい」と判断したという。

佐藤会長は棋士会会長だった2017年(平29)2月、前年秋に起きた三浦弘行九段の「スマホ不正使用疑惑」に関する対応のまずさから、引責辞任した谷川浩司前会長を引き継ぐ形で就任した。当時は大逆風の真っただ中だった。それが16年10月にデビューした藤井聡太6冠の将棋界新記録となる「29連勝」という追い風を得ると、人気はV字回復した。「見る将」といったファン層を増やすためのPR方法、新たな棋戦の創設、名古屋市にある「名古屋対局場」の新設、新たな協賛企業の獲得など、先頭に立って尽力した。

「今まで将棋界にお世話になった恩返しとして進めていた。プレッシャーが大きかった。まだ四段で、(会長就任当初は)2局指しただけだった。これだけの期間に成長し、実力を積み上げて実績を出してきたということに非常に驚いています。ふだんの努力に敬服している」。

来年、日本将棋連盟は創立100周年を迎える。東京・千駄ケ谷と大阪府高槻市で、東西の新しい将棋会館の建設が進んでいる。後進には、「より充実した形で施策を行って頂ければ」と期待している。

これからは棋士に専念する。獲得タイトル13期は藤井と並んで歴代7位タイ。22年度は名人戦の挑戦権を争うA級順位戦で1勝8敗と奮わず、1クラス下のB級1組に陥落した。「正直申し上げると不満。自分としてもう少しできると思っている。会長を務めることで研究の時間は減ったが、より将棋への思いが深くなりました。環境が変わることをどうプラスに生かしていくか。常にタイトル戦に挑戦し、タイトルを目指すという気持ちでいたい」。

会長からは退いても、前に進み続ける。