東京都は18日、環境影響評価審議会を開き、神宮外苑再開発事業をめぐり、事業者側が提出した環境影響評価書の内容を審議した。

世界文化遺産登録の審査など、文化財保護に関する活動を行う国際NGO組織「イコモス」の日本国内委員会が、科学的見地やデータをもとに、評価書には虚偽や事実誤認の内容があると再三、指摘していた。日本イコモス側が指摘した58項目について、事業者側は回答する形で反論。この日は4月24日に続き2度目の審議だったが、審議会は最終的に、事業者側が提出した評価書に虚偽や間違いはないとして、再調査の必要はないと結論を出した。

事業者側とイコモス側の見解が割れたまま、1つの節目を迎える形になった。事業者側は今後、事後調査報告書をまとめるとしたほか、住民説明会開催を検討していることも明かした。

審議会の後、記者会見した日本イコモスの石川幹子理事は、科学的に適正な調査が行われているかどうかの見地から、意見を出してきたと強調。「最大の問題は、学術調査を参考にして間違いだと言っているものを、すべて無視されたことだ」と、審議会の対応を厳しく批判した。また「科学的根拠について専門家としてしっかり調査してきた。説明の場を与えてほしいと言ったが、ひとことも与えられなかった。極めてフェアでなく、民主的な運営ではない」と、審議会の運営手法にも疑問を呈した。

再開発事業はすでに一部工事が始まっており、今後も当初の予定通り継続される。石川氏は「私も学者のはしくれだ。科学を否定することを、断じて許容することはできない。学術や科学技術を無視し、冒涜(ぼうとく)することとどう戦っていくか、これから考えていきたい」と述べた。

神宮再開発事業をめぐっては、再開発で多くの樹木が伐採されることや名所のイチョウ並木にも影響が及びねないこと、また、神宮球場や秩父宮ラグビー場の解体&場所を入れ替えた建て替えに、各方面から反対や懸念の声が出ている。

3月28日に亡くなった音楽家の坂本龍一さんが、再開発計画に反対する書簡を小池百合子知事らに送っていたことが分かり、米実業家のロッシェル・カップさんが立ち上げた再開発に反対するオンライン署名には、これまでに約19万6000人が賛同した。【中山知子】