藤井聡太竜王(王位・叡王・棋王・王将・棋聖=20)が渡辺明名人(39)に3勝1敗として史上最年少名人獲得まであと1勝に迫った、将棋の第81期名人戦7番勝負第5局が31日からの2日制で長野県高山村「緑霞山宿 藤井荘」で行われる。両対局者は30日に現地入りして前日検分を行った後、前夜祭に参加した。

藤井は28日に岩手県宮古市で叡王戦3連覇を果たしたばかり。名人戦の挑戦を決めて以来、「同じ名前で気になります」と話した「藤井荘」での第5局を迎える。「数年前の8月に家族で来ました。下界と違って緑が鮮やかで涼しかったです。対局を楽しみにしています。これまでの経験を生かして全力を尽くしたい」と決意を述べた。

対する渡辺は、「目の前の1局に集中して、自分の持てる力を出し切って頑張っていきたい」と語った。

藤井荘の名人戦は一昨年の第4局、渡辺対斎藤慎太郎八段戦で初めて開催された。渡辺が勝って3勝1敗とし、初防衛への足掛かりとした。それ以来となる。

「温泉街ににぎわいを」と、4年ほど前から女将の藤沢晃子社長らが中心になり、村に働きかけて公募制の名人戦に立候補してきた。3年前に「初当選」したが、コロナ禍で1年スライドされた。長野県北東部、群馬県境の山間部にあり、森鴎外や与謝野晶子らも訪れたという温泉旅館だ。

関係者によると、「藤井荘」の由来は、水が貴重だった昔、井戸の周囲に人が集まるため、名字の藤沢から藤「井」荘とした説、藤沢家に井沢姓の女性が嫁いで両家を合わせた説があるという。

今回は藤井が藤井荘で藤井名人となるか。地元の男性将棋ファンがこう言った。「長野五輪(1998年開催)以来のビッグイベントでしょう」。注目の集まる歴史的大一番となる。【赤塚辰浩】