藤井聡太竜王(王位・叡王・棋王・王将・棋聖=20)が渡辺明名人(39)に3勝1敗として史上最年少名人獲得まであと1勝に迫った、将棋の第81期名人戦7番勝負第5局が31日午前9時からの2日制で長野県高山村「緑霞山宿 藤井荘」で始まった。先手後手は事前に決まっており、先手渡辺がひと呼吸置いて気持ちを整えてから角道を開けた。対する後手藤井はいつものようにマスクの右ひもを外してお茶を一服、口に含むとゆっくりと飛車先の歩を突いてスタートした。

藤井は午前8時47分に入室すると液晶時計、汗ふきシートなどを信玄袋から取り出した。対する渡辺は午前8時50分に入室。「おはようございます」と関係者に声をかけると、足早に着座した。

かど番の渡辺は一昨年、初めて同所で名人戦第4局を開催した際、挑戦者の斎藤慎太郎八段戦を下して3勝1敗とし、初防衛への足掛かりとした。それ以来となる。19年ぶりの無冠にならないためにも、ここは踏ん張りたい。30日の前夜祭では、「自分の持てる力を出し切って頑張りたい」とした。

対する藤井は、28日に岩手県宮古市で叡王戦3連覇を果たしたばかり。しかも、挑戦者・菅井竜也八段(31)との第4局は2回の千日手指し直しの末に勝ち、3勝1敗で下した。強行軍になるが、前夜祭では疲労は感じさせなかった。

名人戦の初挑戦を決めて以来、「同じ名前で気になります」と話した第5局を迎えた。今局に勝てば20歳10カ月での名人獲得となる。1983年(昭58)に谷川浩司現九段(61)が達成した、21歳2カ月の史上最年少名人の記録を40年ぶりに更新する。

持ち時間は各9時間。両日とも午前10時と午後3時におやつが出される。正午~1時間の昼食休憩もある。2日目の午後5時からは30分の夕食休憩がある。初日は午後6時30分の段階で手番の側が「封じ手」を行い、終了する。