自民党執行部は1日、埼玉、愛知両県連の幹部と党本部で面会し、次期衆院選の埼玉14区、愛知16区では自民候補を擁立せず、公明党の候補を推薦する方針を伝えた。両県連は、党本部方針を容認する考えを示したが、地元では独自候補擁立論が根強い。この日も「だれも納得していない。動くつもりはない」(愛知県連幹部)の声が出るなど、実際に選挙で県連が公明候補の支援に動くかどうか、不透明な部分は残ったままだ。

茂木敏充幹事長と面会した埼玉県連会長の柴山昌彦衆院議員は「独自の候補擁立を執行部にお願いしてきたが、幹事長から、今回は自民党は候補を擁立しないという話があった。苦渋の思いはあるが、幹事長の決断を了とするとお伝えした」と厳しい表情で語った。

一方、愛知県連からは、より厳しい声が上がった。県連会長の丹羽秀樹衆院議員は「公認、推薦の決定権は党本部にある。県連として理解したが、地元としっかり話し合っていく必要があるのではないかという話をした」と述べた。独自候補擁立を求める地元からの嘆願書を提出したことも明かした。

ただ、県連副会長の水野富夫県議は「(選挙区内では)だれひとり納得していない。(地元の理解を得るため)動くつもりはないです」と答えた。別の県連幹部も「幹事長からは党本部の方針をお聞かせいただき、内容は理解したが、地元として受け入れるか、納得できたかという質問には『非常に厳しい』と答えざるを得ない」と話した。

茂木幹事長は両県連に「連立政権の維持のため、理解と了承をお願いしたい」と、要請した。小選挙区定数「10増10減」に伴う自公間の候補者調整は、難航。新設される東京28区の候補者調整の対立を受けて、態度を硬化させた公明は先月25日、東京での自民との選挙協力解消を通告した。東京以外にも影響が及ぶ恐れがあり、あわてた自民側は、すでに公明が候補者を決めている埼玉14区、愛知16区では公明候補を推薦する方向で、県連と調整を行うと同29日、公明側に伝えるに至った。自身が埼玉14区に出馬予定の公明党の石井啓一幹事長は「なるべく速やかに調整していただきたい」と求めていた。【中山知子】