LGBTなど性的少数者への理解増進法案は9日、衆院内閣委員会で、この日朝提出された与党の修正案が、自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党の賛成多数で可決した。立憲民主、共産両党、れいわ新選組は反対した。

委員会では当初、<1>与党案<2>立民、共産、社民各党の案<3>日本維新の会と国民民主党の案という与野党計3案の審議と採決が行われる予定だった。9日になって自民、公明、日本維新の会、国民民主の各党が、与党案を修正することで合意し、理事会に修正案が提出され、修正案の審議も加わった。立憲民主党などは一連の経緯の説明を求め、午前9時から開かれる予定だった委員会の開会は1時間以上、遅れた。

修正案には、焦点だった「性自認」の表現について、維新と国民の案にあった「ジェンダーアイデンティティ」とすることが盛り込まれた。また「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう留意する」との規定も盛り込まれた。

この日の委員会審議では、複数の政党による複数の法案が提出されたことに関して「対立法案のようになっていることは、当事者へ大変失礼な話」(有志の会の緒方林太郎氏)との指摘も出た。立民の西村智奈美前幹事長は、2021年5月に、自民党も含めた超党派の実務者でまとめた法案の内容に自民党内で反対の声があり、2年あまりたなざらしになってきた経緯を念頭に「2年前に全党が合意してまとまった法案を(国会に)提出できていたら、分断はここまで大きくならなかった。修正案は議連に戻して議論するのが筋。残念な経緯だった」と述べた。

委員会終了後、自民党の新藤義孝衆院議員は「5会派(自民、公明、維新、国民、有志の会)の賛成がいただけたことはありがたい。ぎりぎりまで交渉があったが、すべては法案を前進させるためのものだ」と理解を求めた。また「私どもの法案に賛成いただけなかった政党の皆さんも、理解を進めることには全員が一致している。目的や理念、法案の骨格は同じで、表現への賛否が分かれた」などと訴えた。

法案は13日に衆院を通過し、16日にも成立の見通し。しかし、自民党の保守系議員の中には与党案にも異論があり、採決の際に党議拘束を外すよう求める声が出ている。党内手続きを経ていない修正案への反応は不透明で、採決で造反者が出るとの見方が強い。