中古車販売大手ビッグモーター(東京)が25日、都内で記者会見を開き、兼重宏行社長(71)が、自動車保険の保険金不正請求問題を受けて7月26日付で辞任することを発表した。後任には専務取締役の和泉伸二氏が就任する。兼重氏の息子の兼重宏一副社長も辞任するが、宏一氏は会見には出席しなかった。兼重氏はまた、不正請求行為について、板金塗装部門が単独で行ったとし、自身を含むほかの経営陣は「知らなかった」と述べ、組織的な不正を否定した。

兼重氏は不正について、6月26日に特別調査委員会の報告書を受けて初めて知った、それまでは知らなかったと主張。「本当に耳を疑った。こんなことまでやるのかと、がく然としました。現場に入って、よく見ておけばよかった。大切なお客さまの車をお預かりして、これから修理する人間がキズをつけて、水増し請求する。ありえんです。本当に許し難い。ゴルフボールを靴下に入れて振り回して、損傷範囲を広げて水増し請求する。許せません。ゴルフを愛する人に対する冒とくですよ。事実関係を確認中ですが、分かり次第、刑事告訴を含む厳正な対処をしたいと考えています」「これは犯罪ですから、罪を償ってもらわないと」などと強調した。今後、経営に対して関与することは「一切ありません」と述べた。

組織的な不正かを問われると「問題は生産現場で、分からないところで起きている」「個々の工場長が指示してやったんじゃないかと。それでないとこういうことは起きないと思ってます。不合理な目標設定、それがノルマになって。本部長がノルマを達成させるために強くプレッシャーをかけていたと考えられます。報告書には手を染めたのが104人と書かれているが、決して組織的ということはありません」「それだけのノルマ、プレッシャーをかけても、全くやってない人間もいるわけですから」などと否定した。

特別調査委の報告書の前、昨年に従業員から内部告発があったことを指摘されると「あの時しっかりやっておけばよかったと反省しています。過去にその人間から何度も工場長、仲間との確執の報告がありまして、今回もまたかと、仲良くやってくれということで、内容を確認させたところ、仲良くやることになりましたと報告を受けたので、解決したなと思いました」と説明した。

成長戦略の経営方針が問題の背景にあったかについては、「内部統制やガバナンスが、今の規模に全くあっていない。板金部門は内部統制が全くないような状態。私の経営手法として、できるだけスピード感を持って、フラットな組織で意思決定がすぐできるように、担当責任者に任せてきたが、目標の数字がだれが見ても不合理だろうと。それを現場に強いて、プレッシャーをかけていた。現場の人間に申し訳ない」と述べた。

兼重氏はまた「今回の問題は、私の管理不足で招いてしまったと責任を考えています」とし、今後、新たな不正が見つかった場合の責任の取り方については「辞任しても責任を取れという申し出があれば、潔くお受けします」とした。

次期副社長の石橋光国取締役は「調査報告書では、コーポレートガバナンスの機能不全、経営陣に盲従し忖度(そんたく)するいびつな企業風土、現場の声をひろいあげようとする意識の欠如、これらが原因で不正が行われたことがあるので、経営陣の責任は感じています」「今回は板金部門の不正ですが、そもそもの問題が企業風土なので、すべての部門で、不正に関して想定できるものの調査を進めていく考えです」などと補足し、謝罪した。

兼重氏は記者会見の開催が遅れたことについては、「私の認識の甘さ。もっとすみやかに会見を開けばよかったと反省している」と答えた。報告書を開示した後に、周辺からこれでは説明責任を果たしていないという声が多く寄せられたため、会見を開いたと説明した。

自賠責保険などをめぐる損害保険会社との強い関係が不正の背景にあるかについては「全く関係ない」と強調。損保から多くの出向者を受け入れているが「コンプライアンス教育、見積もり教育、監査などの人材として受け入れているので、不正への関与は一切ない」とも説明した。

顧客や損保との信頼関係を取り戻せるかと聞かれると「私が経営するのでは、お客さまの信頼は得られない」と述べた。兼重氏は大株主でもあるが「今後、経営に影響力を与える行動は取るつもりはありません」とも重ねた。新社長の和泉氏は「信じています」と付け加えた。和泉氏はまた、問題発覚後に現場で出ている影響について「販売台数、買取台数は、通常に比べて約半減しているのが事実」と答えた。