上野愛咲美女流名人(五段=21)が、女性として囲碁界で初めて新人王戦を制した。
22日、東京・市ケ谷「日本棋院」で打たれた第48期新人王戦決勝3番勝負第2局で、姚智騰(よう・ちとう)六段(25)を下した。初戦に次いで連勝し、このタイトル戦で初優勝を果たした。
一昨年に準優勝だった上野は終局後の会見で「今年こそはと思っていました。うれしいです」と笑顔を見せた。女性では1997年(平9)に青木喜久代八段が初めて決勝に進出したが、やはり準優勝に終わっている。壁を突破した。
囲碁の男女混合のタイトル戦で、女性の優勝例は過去3度。1手30秒の早碁の若手限定戦「広島アルミ杯・若鯉戦」は20年に藤沢里菜女流本因坊、21年と22年に上野が優勝した。持ち時間が3時間と長く、複数回の勝負で決勝を争うタイトル戦では今回が初となる。
日本棋院での研究会のほか、上野はここ数年AIを取り入れている。定跡や布石などを勉強し始め、分からない局面では意見を聞く。「今までは恥ずかしくて誰にも聞けなかったがAIには聞けます。レベルがアップしました」と言う。さらに、4年前にデビューした仲邑菫女流棋聖が台頭してきたことで、「負けたくなくてやる気もアップしました」と話す。
今後はアジア大会(23日~10月8日)の日本女子代表として、藤沢、妹の上野梨紗二段とともに会場の中国・杭州へと飛ぶ。「3人で楽しんで、いい色のメダルを取りたい。その前に妹にドヤ顔します」。会見では最後まで笑顔を絶やさなかった。【赤塚辰浩】
◆上野愛咲美(うえの・あさみ) 2001年(平13)10月16日生まれ。東京都出身。藤澤一就八段門下。16年4月デビュー。獲得タイトルは新人王、女流名人、女流本因坊など通算13期。縄跳びを777回して、バナナを食べて対局に臨む。盤に向かえば「ハンマー」と呼ばれる強烈パンチが持ち味。今年32勝15敗。通算293勝150敗。