将棋の第94期ヒューリック杯棋聖戦を制した藤井聡太棋聖(21)の就位式が3日、東京都千代田区「帝国ホテル」で行われた。今期は佐々木大地七段(28)の挑戦を3勝1敗で退け、4連覇を達成した。6月5日の第1局はベトナム・ダナンで開催され、初の海外対局という貴重な経験もした。
3年前、初タイトルとなる棋聖を獲得して以降、昨年までの棋聖就位式はコロナ禍のために報道陣と関係者だけで開催された。4回目にして初めて、200人ものファンを呼んでの祝宴となった。
今回の記念扇子には「浩然(こうぜん)」と揮毫(きごう)した。心などが広くゆったりしている様子を意味している。8冠まであと1勝と迫り、世間の注目が集まっても、藤井は「意識せず」と言う。それを表現したかのような言葉だ。
一昨年の揮毫は、どんな試練も努力して乗り越えれば快い青空が開けているという意味の「雲外蒼天」、昨年は、さわやかな感じさえを与えるほどの新鮮さを表す「清新」。デビュー以降は「飛翔」「大志」など、目標に向かうような言葉を使ったが、ここへ来て自然体を強調している。
謝辞では、「本当にきわどいシリーズだったと感じています。今期の対局をしっかりと振り返って、来期に向けて改善していきたいと思います」と述べた。それはそっくりそのまま、どのタイトル戦にも生かしている。8冠全制覇は最短、来週11日の王座戦第4局(京都市)で達成されそう。心構えはできている。【赤塚辰浩】