<CBC賞>

新人・女性ジョッキー今村聖奈騎手の「勝負勘」には恐れ入った。スタートから気合をつけて先頭に立ったテイエムスパーダの前半3ハロンは31秒8の超ハイパース。いくら開幕週の高速馬場とはいえ、ラップだけ見れば暴走に近い。普通なら直線まで後続を引きつけて脚をためるところだが、逆に4コーナーで2番手スティクス以下を引き離しにかかる。

直線、後続を突き放す今村聖奈騎乗のテイエムスパーダ(撮影・渦原淳)
直線、後続を突き放す今村聖奈騎乗のテイエムスパーダ(撮影・渦原淳)

この勝負勘。直線を向いた時にはセーフティーリードに広がっていた。軽量48キロ、内枠、止まらない馬場。「行ったもの勝ち」の傾向が強いとはいえ、それをテン乗りで体現できるところが彼女のすごさだ。もちろん五十嵐師の「スタートだけは気をつけて。逃げられるなら行け」の指示もあったが、その通り乗ることがどれだけ難しいか。五十嵐師の想像をはるかに超える騎乗だった。

CBC賞を制し、テイエムスパーダをねぎらう今村聖奈騎手(2022年7月3日撮影)
CBC賞を制し、テイエムスパーダをねぎらう今村聖奈騎手(2022年7月3日撮影)

「全然緊張しない」という度胸の持ち主だが、これはしっかり準備した結果でもある。主戦の国分恭騎手から馬の特長など助言をもらい、それを調教で自分の感覚とすり合わせる。最終追い切りでは「お友達になろう」と馬に寄り添った騎乗で手の内に入れた。また小倉の馬場読みも確かだった。CBC賞までに土、日で7鞍芝のレースに騎乗して時計、流れなど頭に入れていたのだろう。

テイエムスパーダなら少々速くなっても粘れる。だからスタートはそれほど速くなかったが強引に出して行けたし、早めのロングスパートで勝負をかけることができた。事前の準備は緻密に、レースは大胆に。文句なしの重賞初挑戦V。スーパールーキーの今後がさらに楽しみになった。

テイエムスパーダでCBC賞を制しガッツポーズの今村聖奈騎手(撮影・渦原淳)
テイエムスパーダでCBC賞を制しガッツポーズの今村聖奈騎手(撮影・渦原淳)