<マイルCS>

1ハロンあれば十分だった。4コーナーを14番手で回ったセリフォスのレーン騎手は、直線で大外へ持ち出してからもしばらく馬なりで前を追った。先頭まで約10馬身。「届くのは簡単じゃない」。そう感じながらも、ゴーサインを出したのは残り200メートル地点。なぜそこまで我慢できたのか。

1つは追い切りで感じた瞬発力。仕掛けた時の反応の速さは桁違い。その感触を信じた。逃げたピースオブエイトの前半600メートルは35秒1。G1にしては遅い。ある程度ポジションを取りにいく馬が多い中、後方に控えたのは走りのリズムを重視して折り合いに専念するため。無駄に脚は使わない。馬の後ろでじっと息を潜めた。

2つめは馬場読み。良発表でも下は軟らかい。特に内側は荒れてきており、しまいは時計がかかると読んだ。だから距離ロスがあっても大外へ。これも自慢の決め手を最大限引き出すためだ。実際にラスト1ハロンは11秒6で、前ラップ(10秒8)から0秒8も落ちた。

もし、早めに動いていたら、ゴールまで脚が続いたか分からない。この大胆とも思える騎乗が、セリフォスの爆発的な末脚を生みだし、悲願のG1制覇へと結び付けた。