有馬記念(G1、芝2500メートル、25日=中山)は「持久力型」が強い。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、昨年の2着馬ディープボンド(牡5、大久保)に注目する。高速決着や瞬発力勝負では分が悪いが、例年、上がり時計のかかる暮れの大一番はもってこいの舞台。逃げるタイトルホルダーの平均やや速めのペースが、浮上のきっかけとなるか。検証する。

「持久力型」ディープボンドの出番は十分ある
「持久力型」ディープボンドの出番は十分ある

ディープボンドの真骨頂は粘り強い走りだ。昨年の有馬記念を例に取ると、最初の100メートル(6秒9)を除く5ハロン通過は58秒8のハイペース。パンサラッサが大逃げしたこともあるが、2番手以降もよどみのない流れの中、好位5、6番手から伸びて連対した。

天皇賞・春でもタイトルホルダーには突き放されたが、早めに追いかけて2着に粘った。この長距離向きのスタミナ、持久力が有馬記念の流れに合う。中山2500メートルは外回りの一番奥深いところからスタートしてコーナー6つ。器用さが要求され、追われて徐々に加速していくタイプには脚の使いどころが難しい。

しかも2周目は内回りに入り、きつめの3、4コーナーを回る。直線は310メートル。ゴール前には急坂が控える。いくら末脚に自信がある馬でも直線まで待っていては届かない。「よーい、ドン」の瞬発力勝負になりにくいのは、このコース設定によるところが大きい。

その点、ディープボンドは先行力があって、自在に立ち回れる機動力もある。まさに中山向きだ。当コースでは、3回走って【0 1 0 2】だが、有馬記念以外は2000メートルの皐月賞(10着)、日刊スポーツ賞中山金杯(14着)と距離不足で力を出せなかった。コーナー6回の2500メートルで消耗戦になれば話は違う。

凱旋門賞からのステップは昨年と同じだが、今年は4コーナーで早々に脱落して走ってない分、大きな疲労もなかった。タイトルホルダーという強力な逃げ馬がいることで後続の仕掛けが早くなれば、それこそゴール前は混戦に。「持久力型」ディープボンドの出番は十分にある。

■一瞬の脚には不向きな流れ

【ここが鍵】

有馬記念は2周目3コーナーから激しさを増す。直線が310メートルと短く、多頭数の後方一気では厳しいというのが、大きな理由だ。各馬の仕掛けが早くなれば、どうしてもゴール前は甘くなる。過去5年の上がり3ハロンを見ても17年=35秒2、18年=36秒9、19年=37秒6、20年=36秒6、21年=36秒7と、キタサンブラックがスローペースで逃げ切った17年を除けば、すべて36秒以上かかっている。

つまり一瞬の脚で勝負する馬には不向きな流れだ。ある程度、早めに動いても最後まで止まらずに伸びる「持久力型」が好走するパターン。しかも、今年逃げるタイトルホルダーは平均ラップを刻んでライバルの体力を奪っていくタイプ。このサバイバル戦を勝ち抜くスタミナと、スピードの持続性が勝敗を分けるポイントとなりそうだ。

■ジャスティンパレス、先行策から長くいい脚

ジャスティンパレスは神戸新聞杯の勝ちっぷりが良かった。3番手から早めに抜け出して、2着ヤマニンゼストに3馬身半差。広い中京でラスト600メートルから11秒4-11秒2-12秒1のラップで、しかもゴール前は抑える余裕もあった。菊花賞でもボルドグフーシュと並ぶように伸びて、際どい3着に入った。スパッとは切れないが、先行策から長くいい脚を使うタイプで中山向き。3000メートルは少し長い印象があり、2500メートルに短縮するのも歓迎だ。

■菊花賞2着ボルドグフーシュ、力差はない

菊花賞2着のボルドグフーシュも、長くいい脚を使う。前走も3コーナー10番手から直線入り口では4番手まで進出。ラスト800~400メートルの11秒9-11秒9の高速ラップで大外をまくり、さらに直線坂上から、もうひと伸びした。アスクビクターモアには鼻差届かなかったが、この勝ち馬がダービー(3着)で天皇賞・秋を制したイクイノックスと0秒3差の勝負をした比較から、このメンバーでも力差はない。仕掛けのタイミングひとつだ。