大阪杯は展開が読みにくい。これといった逃げ馬不在で、レースの流れや仕掛けのタイミングが勝敗を分けそう。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、暮れの香港C7着以来となるジャックドール(牡5、藤岡)に注目した。逃げても好位差しでも競馬できる自在性は、阪神内回り2000メートルで大きな武器となる。

水島の注目馬ジャックドール
水島の注目馬ジャックドール

ジャックドールは逃げの手に出るのか。このあたりは武豊騎手の腹ひとつだろうが、控えても昨年の札幌記念で3、4番手からパンサラッサを差し切ったように自在性もある。この立ち回りのうまさが、阪神内回り2000メートルにぴったりフィットする感じだ。

大阪杯がG1に昇格した17年以降、勝ち馬の4コーナーでの位置取りは以下の通り。17年キタサンブラック2番手、18年スワーヴリチャード1番手、19年アルアイン4番手、20年ラッキーライラック5番手、21年レイパパレ1番手(逃げ切り)、22年ポタジェ4番手と、すべて5番手以内。後方から直線だけで差し切った馬は1頭もいない。この傾向にジャックドールは当てはまる。しかも強調したいのは、一本調子の逃げ・先行馬ではないという点だ。レコードで逃げ切った昨年の金鯱賞(中京2000メートル)を例にとる。前半3ハロン35秒7、同5ハロン59秒3のスローペースに持ち込み、後半は残り600~400メートルで(11秒6→)11秒0の高速ラップを刻んでいる。

つまり、逃げながらさらにギアを上げ、後続を突き放した。ラスト1ハロンも12秒3でまとめ、2着レイパパレに2馬身半差は強い。4コーナーの出口付近からロングスパートを決めた形で、このスタミナがあれば後続に早めに脚を使わせることも可能。昨年の大阪杯は2ハロン目を10秒3で飛ばし、落鉄もしていた。敗因は明らか。マイペースに持ち込めば、戴冠のチャンスはある。

◆逃げ馬不在なら前残りに拍車

【ここが鍵】

阪神の内回り2000メートルは「先行有利」と言われる。スタンド前からの発走で、スタートしてすぐ急勾配の上り坂があるため加速はつきにくい。そして小回りのコーナーが4つ。比較的ペースが落ち着くのは、このコース設定によるところが大きい。

しかも最後の直線は356・5メートル(Aコース)と短く、追い込みの各馬は早めに動かざるを得ない。逃げ馬不在なら、なおさら前残りの傾向に拍車がかかる。ただ、3コーナー過ぎから後続の追い上げで一気にペースが上がれば、それをしのぐスタミナも必要になってくる。

◆マテンロウレオ、先行&操縦性

マテンロウレオも立ち回りのうまさが目立つ。前走の京都記念は5番手を進んだが、3コーナーで後続の各馬が外からまくってくると、いったん引いてポジションを下げ、直線は狭いスペースを突いて2着まで押し上げた。好位につける先行力があり、鞍上の指示通り動ける操縦性の良さもある。精神的に大人になったのが大きい。相手は一気に強くなるが成長著しい4歳馬。侮れない1頭だ。

◆ノースブリッジ、壁を作る形に

ノースブリッジは折り合いに難しい面もあるが、岩田康騎手がすっかり手の内に入れている。AJCCも4番手の内で脚をため、直線は鋭く抜け出した。行こうと思えばハナを切るスピードがあり、楽に好位をキープできる。あとはスムーズに運べるかだが、前走のように壁を作る形になれば問題ない。重馬場のエプソムCを勝ったようにスタミナがあり、少し馬場が渋るようなら大駆けがある。