ひとつ、確実に言えるのは「まぐれではない」ということです。レーン騎手の腕、中内田厩舎の信念、セリフォスの能力。勝つべくしての勝利でした。

前後半800メートルずつのラップは46秒6-45秒9。ミドルペースでも若干遅めでした。セリフォスの位置取りは中団の後方、13~14番手あたり。流れを考えれば、道中で少しポジションを上げたいところですが、レーン騎手は慌てません。6番人気で少し気楽なのもあったかもしれませんが、相棒の能力を直線だけに凝縮しました。大外から上がり最速33秒0で差し切り勝ち。違った一面を引き出し、馬の可能性も広げました。

この日、阪神ではマイルCS以外にも外国人騎手がたくさん勝ちました。上手なうえに、いい馬に乗るわけですから、勝って当然でしょう。ですが、日本人騎手はそれで腐っていてはいけません。世界の一流が目の前にいる、技術を吸収できるチャンスがあるわけです。彼らも何もせず勝っているわけではありません。セリフォスは前走の富士Sを藤岡佑騎手で勝ったうえでの乗り替わりでした。レーン騎手にもプレッシャーはあったはずです。その状況でのあの落ち着き。前週のC・デムーロ騎手もそうですが、感服しました。

中内田厩舎にも拍手を送ります。古馬のJRA・G1は初制覇です。デビューからずっとマイル戦を使い続け、春の安田記念では古馬にぶつけて“寸法”をはかり、実りの秋につなげました。セリフォスは間違いなく、今後のマイル界を引っ張る馬になるでしょう。

2着ダノンザキッドはG1馬の底力を見せました。昨年も強敵相手に3着でしたし、時期やコースも合うのでしょう。軽視してはいけない1頭でした。3着ソダシは正攻法の競馬で力を出し切りました。ゲート入りはスムーズでしたし、道中も気分良く走っているように見えました。力を出せれば、牡馬相手でも互角にやれる実力馬です。(JRA元調教師)

セリフォスでマイルCSを制したレーン騎手は三上助手(右)の歓喜の出迎えに笑顔(撮影・白石智彦)
セリフォスでマイルCSを制したレーン騎手は三上助手(右)の歓喜の出迎えに笑顔(撮影・白石智彦)