馬券発売されたケンタッキーダービーの陰に隠れてしまいましたが、先週末には欧州クラシックレースの幕開けとなるG1英2000ギニー(芝直線1600メートル)と、牝馬によるG1英1000ギニー(芝直線1600メートル)が、英国のニューマーケット競馬場で開催されました。重馬場で行われた2つのレースの結果を振り返っておきます。


日本の皐月賞にあたる英2000ギニーは14頭立てになりました。1番人気は2歳時4戦3勝のディープインパクト産駒で、エイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗のオーギュストロダン(牡3)。道悪の経験もあって単勝2・6倍の圧倒的支持を集めました。4・5倍の2番人気はG1デューハーストステークス(ニューマーケット競馬場、芝1400メートル)まで重賞を3連勝し、前走の落馬競走中止のアクシデントを経て、ここに臨んだシャルディーン(牡3、父フランケル、A・ボールディング厩舎)となりました。


レースはオイシン・マーフィー騎手の伏兵ハイロイヤルが先導し、残り500メートルでライバルを突き放しにかかりましたが、いざ追い出されると左右へ蛇行。この機を突くようにしてランフランコ・デットーリ騎手のシャルディーンが先頭を奪うと、スタンド側から単勝12倍のロイヤルスコッツマンが猛追。3頭による争いになりましたが、デットーリ騎手の左ムチに励まされたシャルディーンが最後の100メートルを独走。立て直してこれを追い上げたハイロイヤルが1馬身3/4差の2着、さらに半馬身遅れの3着にロイヤルスコッツマンが続きました。人気を背負ったオーギュストロダンは、レース半ばで他馬に寄られる不利もあって徐々に後退して勝ち馬から20馬身以上離された12着で入線。同厩舎で3番人気のリトルビッグベアは歩様を乱して最下位の14着でゴールにたどり着きました。重馬場の勝ちタイムは1分41秒64。これは2000年以降で2番目に遅いタイム(最も遅かったのは2012年優勝キャメロットの1分42秒46)となりました。

今年いっぱいでの現役引退を公表しているデットーリ騎手は1996年マークオブエスティーム、1999年アイランドサンズ、2016年ガリレオゴールドに続き、このレース4度目の制覇。ボルコンスキー、ウォローで制した父ジャンフランコ・デットーリと合わせて親子で6勝となりました。


◆英2000ギニー<5月6日 ニューマーケット 芝直線1600メートル 重 出走14頭>


優勝シャルディーン(L・デットーリ騎手、A・ボールディング厩舎)1分41秒64

2着ハイロイヤル 1馬身3/4

3着ロイヤルスコッツマン 1/2馬身


勝ったシャルディーンはフランケルの産駒。昨年6月にニューベリ競馬場でデビューし、ここは13頭立ての5着でしたが、2戦目に勝ち上がると、8月のG3エイコムステークス(芝1400メートル)をライアン・ムーア騎手で快勝。4戦目からはデットーリ騎手を鞍上に固定して9月のG3シャンペンステークス(芝1410メートル)、10月のデューハーストステークスも勝って、2歳時を5戦4勝で終えました。今シーズンの使い出しとなった4月22日のG3グリーナムステークス(芝1400メートル)は、スタート直後に隣の馬にぶつけられてデットーリ騎手が落馬、競走を中止していました。フランケル産駒の欧州クラシック優勝はアダイヤー(英ダービー)、アナプルナ(英オークス)、ロジシャン(英セントレジャー)、ハリケーンレーン(英セントレジャー)、ナシュワ(仏オークス)、ウェストオーバー(愛ダービー)に続く7頭目です。人気を裏切ったオーギュストロダンのオブライエン調教師はレースと同じ日に行われたチャールズ国王の戴冠式の影響で、当日輸送がかなわず、不慣れな前日輸送になったこと、レース中の不利などを敗因に挙げています。立て直して、6月3日のG1英ダービーに向かうものと見られています。


英2000ギニーの翌日(7日)に行われたG1英1000ギニーは20頭の多頭数となりました。人気はG1モイグレアスタッドステークス(芝1400メートル)など2戦2勝で、カルティエ賞最優秀2歳牝馬に輝いたタヒーラ(牝3、父シユーニ、英D・ウェルド厩舎)が集め、単勝2/5倍。G1ブリーダーズカップジュベナイルフィリーズターフ(芝1600メートル)を制したメディテイト(牝3、父ノーネイネヴァー,愛A・オブライエン厩舎)が6倍の2番人気となりました。


レースは人気薄のマチルダピコットが単騎で逃げるところを残り500メートルでかわした5番人気(10倍)のモージュ(牝3、父イクシードアンドエクセル、S・B・スルール厩舎)と人気のタヒーラが、馬場の真ん中を舞台に一騎打ち。モージュが食い下がるタヒーラを半馬身差抑えてゴールに飛び込みました。

前日の英2000ギニーで、悔しい2着となったオイシン・マーフィー騎手は、新型コロナウイルスのプロトコル違反とアルコール検査の失格などで約14カ月間の騎乗停止から復帰後、初めてのG1勝ち。2着に敗れたタヒーラはデビューから3戦目にして初の敗戦となりました。勝ちタイムは1分37秒92でした。


◆英1000ギニー<5月7日 ニューマーケット 芝直線1600メートル直線 重 出走20頭>


優勝モージュ(O・マーフィー騎手 S・B・スルール厩舎)1分37秒92 

2着タヒーラ 1/2馬身

3着マチルダピコット 7馬身1/2


勝ったモージュはゴドルフィンの生産・所有馬でサイド・ビン・スルール調教師の管理馬。父はオーストラリアと欧州でG1ウイナーを送るイクシードアンドエクセル(産駒の英国クラシック制覇はこれが初)、母は英ダービー馬ニューアプローチの娘のモダンイデオロスで、兄には昨年のG1仏2000ギニーやG1ブリーダーズカップマイルを制した現役のモダンゲームズ(牡4、父ドバウィ、英C・アップルビー厩舎)がいます。

昨年5月にニューマーケット競馬場の芝1200メートル戦でデビューして2着に4馬身3/4差をつけて優勝。2戦目のG3アルバニーステークス(芝1200メートル)はメディテイトの2着でしたが、3戦目のダッチェスオブケンブリッジステークス(芝1200メートル)で2勝目を挙げ、その後はG2ロウザーステークス(芝1200m)が4着、G1チェヴァリーパークステークス(芝1200メートル)を3着してシーズンを終えました。

今年はドバイのメイダン競馬場で2戦して1月の牝馬限定戦(芝1400メートル)と、2月の牝馬限定戦(芝1600メートル)を連勝。英国に戻って迎えた大一番で大輪を咲かせました。

マーフィー騎手は英1000ギニー初制覇(英国クラシックはカメコでの英2000ギニーに続き2勝目)。スルール調教師と馬主のゴドルフィンは1998年のケープヴェルディ、2002年カッジアに続き3勝目となりました。

モージュは次走5月28日のG1愛1000ギニー(カラ競馬場、芝1600メートル)を経て、ロイヤルアスコット開催のG1コロネーションステークス(アスコット競馬場、芝1590メートル、6月23日)に向かう模様です。

(ターフライター奥野庸介)

※成績などは5月11日現在


<次回更新は5月26日の予定>