天国の母にとっても、池添兼厩舎にとっても期待の“末っ子”だ。良血メイショウネムノキ(牝、父ロードカナロア)が7日札幌の新馬戦(芝1800メートル)でデビューを迎える。昨年8月2日に世を去ったメイショウベルーガの忘れ形見。来年2月末で定年の池添兼雄調教師(69)も将来性を見込んでいる。

雨上がりの虹の下で、メイショウネムノキが母親譲りの芦毛を艶めかせた。ちょうど1年前の8月2日に、16歳で世を去ったメイショウベルーガ。その末娘がいよいよ初陣を迎える。晩成の血統ではあるが、担当の清水助手は「すごくいい馬。めちゃおとなしくて素直で乗りやすい。お姫様みたいな感じ。いきなりはどうかだけど、走ってくる馬だと思う」と素質を見込む。

亡き母は牡馬相手にG2・2勝を挙げただけでなく、繁殖入り後も2頭の重賞勝ち馬(メイショウテンゲン、メイショウミモザ)を生んだ。産駒6頭中5頭が自身と同じ毛色で、遺伝子の強さを感じさせる。清水助手は「テンゲン、テンシャ、ミモザにも乗ったことがあるけど一番しっかりしてるっぽい。体もいい」と評価する。6月下旬から函館でみっちり乗り込まれ、調教量に不足はない。

今日3日には池添騎手が駆けつけて追い切りに乗る予定だ。母の主戦も務め、11年天皇賞・秋では3コーナーで異変を感じて競走を中止させ、安楽死を免れた。「命が助かって良かった」。だからこそつながった血脈。思い入れは強い。

来年2月末で解散する厩舎にとっても、ゆかりの深い一族だ。母子7頭すべてを手がけた池添兼師は「ベルーガの最後の子だからね。ゲートはうまくないけど、きれいな跳びでスピードに乗ればいい感じで走る。俺がやめる頃に走ってくるんじゃないかな」と笑った。その背に託された最後の夢は、ゆっくり大きくふくらんでいく。【太田尚樹】