大人の男は、ひと味違う。菊花賞TRセントライト記念(G2、芝2200メートル、19日=中山、3着までに優先出走権)の追い切りが15日、東西トレセンで行われた。ダービー3着から臨むアスクビクターモア(牡3、田村)は夏を越え、精神面での成長が著しい。終始落ち着いた様子で持ち前の迫力ある動きを見せ、秋の飛躍を予感させた。

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強い男は余裕が違う。ひと夏越えたアスクビクターモアの変化は、追い切りのスタート前に見えた。美浦ウッドチップコースへ入る際、春先までは抑えが利きづらく馬場入り後すぐにスイッチが入ったが、この日は鞍上の合図があるまでゆったりと歩いた。田村師は「馬はこれから走ると分かってギュンと行ってしまう。合図が出るまで我慢することは簡単に見えてなかなかできない」と成長ぶりに目を見張る。

動きにも余裕が見えた。鞍上の手をわずらわせることなく、単走で5ハロン66秒7-11秒8(強め)を計時。馬場の外を回り、リズミカルかつ力強くチップを蹴り上げた。師は「3カ月くらいで大人の馬になっている。乗り役が合図を出してからポンといける。調教のフェーズが変わってきた」とうなずく。気性面の問題から昨年末以降、併せ馬は控えているが、師は「ゆくゆくは前に馬を置いてもいい」と単走からの“卒業”も見据えた。

今年は1勝クラス、弥生賞を連勝し皐月賞5着、ダービー3着。世代屈指の能力を示してきた。次走以降は同世代相手の菊花賞、古馬相手の天皇賞・秋も選択肢に入る。師は「限られたガソリンの中でアクセルとブレーキを両方踏むことは致命傷。レースで我慢できることは出世するために大事な能力」と、舞台はどこであれ、余裕は必ず武器になると力説する。ひと皮むけたアスクビクターモアがまずは初秋の中山から、違いを走りで見せつける。【桑原幹久】