米国の人気種牡馬イントゥミスチーフ(牡17、父ハーランズホリデイ)が歴史を塗り替えようとしています。

11月29日現在で、産駒の獲得賞金額は同馬が持つ米国種牡馬レコードを更新する2635万ドル(約36億8900万円)。ランキング2位のクオリティロードに600万ドル(約8億4000万円)以上の大差をつけて、19年から4シーズン連続しての米種牡馬チャンピオンを確実にしています。

1500頭近くの種牡馬がしのぎを削る米国は、サドラーズウェルズ系が支配する欧州と異なり、いかなる大種牡馬といえどもトップを長く続けることは至難の業。第2次大戦終了の1945年以降、種牡馬チャンピオンの座を3年以上続けた馬はボールドルーラー(63年から7年連続)、ダンチヒ(91年から3年連続)、タピット(14年から3年連続)、そしてイントゥミスチーフの4頭だけ。一時代を築いたノーザンダンサー(チャンピオン1回)、ミスタープロスペクター(同2回)、ストームキャット(同2回)、エーピーインディ(同2回)などビッグネームも長く王座を守ることはできませんでした。

現役時に6戦して2歳G1のキャッシュコールフューチュリティなど3勝を挙げて引退したイントゥミスチーフは、09年に種牡馬入り。その初年度産駒からG1・BCダートマイル連覇のゴールデンセンツを出して脚光を浴びました。セールスポイントは、その雄大な馬格と傑出したスピードで、人気に拍車のかかったここ10年は、毎年200頭を超える良質の繁殖牝馬に交配、たくさんの2世を送り出して質量ともに他馬を凌駕(りょうが)、交配料も米国トップの25万ドル(約3500万円)を誇っています。

日本に輸入された産駒の多くはまだ出世手前ですが、昨年はJRAがイントゥミスチーフの直子を求めて米G1勝ち馬のミスチヴィアスアレックスに白羽の矢を立てて購入(その後、日本軽種馬協会に寄贈)。その血脈は日本の生産界にも影響を及ぼそうとしています。【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)