ソフト仕上げの理由を探る。阪神JF(G1、芝1600メートル、11日)の追い切りが7日、東西トレセンで行われた。G1出走馬の調教を深掘りする「追い切りの番人」では、東京・松田直樹記者が4カ月ぶりの2戦2勝馬モリアーナ(武藤)を凝視した。直線ぶち抜きの新馬戦、早め先頭を押し切ったコスモス賞などを踏まえ、当週の坂路馬なり調整でも好走が見込めると判断した。

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整えるだけ。輸送があってもなくても、モリアーナの調整は軽めで大丈夫というのが陣営の判断だ。美浦坂路での最終追いは馬なりで終えた。4ハロン54秒4-13秒0。体幹の強さを感じさせるぶれない走り、整ったフォーム。武藤師は「フレッシュな状態でいられればいい」と話す。デビュー2連勝で得た教訓だ。

仕上げの感覚はつかんだ。2歳5月時点で美浦ウッド6ハロン80秒5-11秒7を計時してしまうほど、新馬戦の前から動きが際立っていた。2戦目のコスモス賞は札幌入厩後にいわゆる“10日競馬”で勝利した。端的に言えば、仕上がり早のタイプ。「今回はね、2週前に動きすぎちゃったんだ」。2週前追い切りは5ハロン68~69秒台の予定だったが、同65秒1の猛時計となった。「追い切りの1本目からあれだけ動けて、楽々これちゃうんだからね」。1週前に調教駆けする僚馬に併せたことで、あらかた仕上げは完了。だから、そこまで詰め込む必要はなかった。

鬼門ローテも気にならない。過去10年で5頭が無敗Vを決めている2歳女王決定戦。3着以内馬30頭のうち、3カ月以上の休み明けだった馬は2頭しか馬券に絡んでいない。1度はアルテミスSを挟むプランもあったが、4カ月ぶりの直行を選んだのは馬の特性ゆえ。「放牧で30キロ近く増えて、輸送で10キロ減ったとしても理想の470キロ台で出られる。攻めても減らないのは好感が持てる。今思えば、ステップは必要なかった」。この中間の調整からも、師の決断が正しかったと思わせる。

あとは能力を爆発させるのみ。武藤師はその才能にほれ込んでいる。「発達した胸前が一番、目につく。いい心肺機能をしているのがわかる。後肢の踏み込みもすばらしい。ここ2戦は楽だから本気で走ったらどれくらいいけるか、わくわくしています」。競馬では反応の鋭さから直線早め先頭に立つことだけに気を付けるという。命名は娘でタレントの彩未。主戦は息子の雅騎手。武藤家一丸で臨むG1で、モリアーナが馬名通り“風の女神”となる。【松田直樹】