香港国際競走(11日=シャティン競馬場)に出走する各馬が7日に同競馬場で追い切られた。香港出張中の井上力心(よしきよ)記者の連載「井上 香港EYE22」は日本馬の追い切りをチェック。武豊騎手が現地に駆けつけ手綱を取った香港C(G1、芝2000メートル)のジャックドール(牡4、藤岡)をはじめ、適度に硬さと反発力のある芝コースが日本馬にフィットしている印象を受けた。

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7日は決戦の地、シャティン競馬場に初めて足を踏み入れた。スタンドに出てまず目についたのは風になびいたきれいなグリーンベルトだ。テレビで見る限りタフな馬場を想像していたが、実際触ってみると硬さがあり芝も生えそろっていた。芝コースで追い切った日本馬はいずれもストレスなくのびのびと走れていた印象を持った。

そんな中で特に見とれてしまったのがジャックドールだ。5ハロンからピッチを上げ、4ハロン52秒5、ラスト2ハロンは23秒8をマーク。決して速い時計ではないが、柔らかみのある馬体から繰り出されるしなやかなフットワークでシャティンの芝をスイスイと駆け抜けた。

現地に駆けつけ初コンタクトを取った武豊騎手も動きには満足げ。「時計を出し過ぎないよう馬なりで。もともとのイメージ通り、素直にいい馬だと感じた。パワフルでフットワークもすごくいい。芝の感じも合っているのでは」と、馬場適性を見込んでいた。今年の金鯱賞で中京芝2000メートルのコースレコードを塗り替えたようにスピード勝負の馬場傾向は望むところだ。

例年以上にコンディションの良さを感じるトレーナーの声が多かった。芝の追い切りで反応いい伸び脚が目を引いたジャンダルムの池江師は「例年に比べ芝が硬い。1秒くらい速くなるかも」と高速決着を見込んでいた。馬場を歩いてチェックしていたジオグリフの木村師も「先週の(開幕週の)中山と特に変わりはない。(ジオグリフに関し)トラックは問題ない」と感じていた。

香港には週末まで雨予報は出ていない。湿気も感じず実に過ごしやすかった。高速決着が得意な馬、そうでない馬で明暗は分かれるだろうが、世界一スピード指向が高い日本馬たちの勝利を後押ししている気がする。(つづく)

■開幕週の中山並み

【井上チェック】

過去10年、すべて良馬場発表で行われた香港Cの勝ちタイムの平均は2分1秒4。日本の馬場で考えた場合は条件馬でもマークできる時計で、タフな印象を受ける。コース形態の似ている阪神内回り芝2000メートル(オープン以上、良馬場のみ)の過去5年の平均勝ちタイムと比べてみると1分59秒6と1秒8もの開きがある。トレーナーらの「(例年より)1秒くらい速くなりそう」、「中山の開幕週並み」という見解。さらにはパンサラッサ、ジャックドールという強力な先行勢が締まったレースを演出すれば開催されて初となる2分を切る決着もあり得る。