にが~い経験を生かす。根岸S(G3、ダート1400メートル、29日=東京、1着馬にフェブラリーS優先出走権)へ向けた最終追い切りが26日、東西トレセンで行われた。重賞初制覇を狙うレモンポップ(牡5、田中博)は美浦ウッドで2頭併せ。先行から余裕残しの併入で、万全の態勢を整えた。前走武蔵野Sは2着と惜敗。飛躍へ、是が非でも欲しいタイトルを見据えた。

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あま~い! と言わんばかり? レモンポップは最終追い切り後、余裕たっぷりの様子で厩舎へ戻った。ウッドコースでキャミ(古馬1勝クラス)を2馬身先導。追われる相手を尻目に、馬場の真ん中を持ったまま。6ハロン85秒0-11秒8で楽々と併入した。田中博師は「調整程度。後ろから馬に来られた時の反応を見ました。けっこう気持ちも入って、態勢は整っています」と納得した表情を見せた。

甘酸っぱい若駒時代から、白星を重ねた。2歳時はデビュー2連勝でカトレアSを制覇。脚部不安で1年の休養後、2着2回を挟み、今回と同舞台の東京ダート1400メートルで4連勝と波に乗った。師は「完成はまだ先ですがスピード、血統背景を見ても種牡馬になる可能性はあると思います。成績に傷をつけるわけにいかない。大事に適性を見極めて使っていきたい」と先々を見据える。

だからこそ、惜しい。前走武蔵野Sは鼻差の2着。中1週、久々のマイル戦の壁を越えたかに思えたが、あま~くはなかった。師は「距離的な不安は使う前からありましたし、思っていたより(調子の)ピークが過ぎていた。直線を向くまでの感じが何か違うと思いました」と敗因を分析。「それでもあの差。能力は高いです」と自信を深めた。

18年厩舎開業の師もタイトルを欲する。JRA重賞は過去27度の挑戦で2着2回が最高。「重賞を勝ちたいという気持ちはもちろんあります。現状この馬が一番のびのびと走れる舞台。大舞台を意識しないといけない馬なのでタイトルがほしいです」。自らの力を出し切れば、おのずとあま~いひとときが待っている。【桑原幹久】

◆父レモンドロップキッド キングマンボを父に持つ米国産馬。通算24戦10勝、99年ベルモントSなどダートG1・5勝を誇る。00年にはエクリプス賞で最優秀古馬牡馬部門に選出された。01年から種牡馬入りし、21年に引退。JRAでは22頭の産駒がデビューし、アポロキングダムが種牡馬入り。19年からは米国産の産駒ビーチパトロールが日本のレックススタッドで種牡馬入りしている。現在のJRAの現役産駒はレモンポップを含め3頭。