勝負の志願だ。高松宮記念(G1、芝1200メートル、26日=中京)の最終追い切りが22日、東西トレセンで行われた。G1出走馬の調教を深掘りする「追い切りの番人」では、東京・桑原幹久記者が京阪杯の勝ち馬トウシンマカオ(牡4、高柳瑞)に注目。S評価を得た抜群の動き、2週連続で追い切りに駆けつけた鮫島克駿騎手(26)の意欲から人馬のG1初制覇は近いとみた。

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男の意地に、しびれた。WBC決勝で大谷、ダルビッシュの両選手が志願の登板。最後は大谷が締め、感動のフィナーレを迎えた。世界一を引き寄せた決め手は、技術でも地力でもなく、強い意志と感じた。

日米決戦の地マイアミから遠く離れた美浦トレセンでも、G1取りにかける意志の強さを感じさせる男がいた。「マカオとG1を取りたいです」と話す、鮫島駿騎手だ。4度目のコンビで初めて2週続けて、トウシンマカオの背に乗った。

鮫島駿騎手 もともとマカオの1週前は美浦で乗せてもらうことが多いですが、今回はよりコンタクトを取りたいなと思い、当該週も僕からリクエストしました。

追い切り前、ウオーミングアップにダートコースを1周。鞍上は終始手綱を引っ張り気味で、適度な前進気勢がにじむ。美浦ウッドでメイショウホオズキ(古馬1勝クラス)と2頭併せ。同じく手綱を引っ張り気味のまま、直線でスッと加速。チップを軽快に蹴飛ばし、馬なりのまま4馬身突き抜けた。6ハロン81秒4-11秒2。直線でいっぱいに追われた1週前より、滑らかな脚さばきに映る。時計の出やすい馬場を考慮しても、全体時計も速い。

鮫島駿騎手 手前の替え方もスムーズ。あまり促さなくても自分から動いていく前進気勢が出ています。先週と比べてもう1段階上がったかなという感触はあります。

2週続けて「もう1段階上がった」と口にするほど、上積みが大きい。前走は12キロ増と成長分を感じさせる馬体で臨むも、外枠、58・5キロのハンデもあり4着。ただ、同騎手は「高松宮記念と同じ舞台なので無駄なレースにはしたくなかった」とコーナリングや折り合いを確認。追い切りを含め、事前準備は万全だ。

快速馬ぞろいのスプリントG1とあり、各馬軽快な動きが目立つ。主役不在、混戦模様の一戦。

鮫島駿騎手 勝たないと評価されない世界だと思っていますし、僕もG1ジョッキーになりたいという気持ちが当然あります。ただ個人的な気持ちより、マカオと一緒にいいレースができれば、と思います。

最後は男の意地が、G1タイトルを引き寄せる。【桑原幹久】

<高柳瑞師 一問一答>

-好時計をマーク

高柳瑞師 そんなに出ているのかなという感じに見えたけど、今日に限らず先週も普通のキャンターでも体を使えている。

-我慢の利いた走り

高柳瑞師 以前から前進気勢は強いが、若い頃よりは収まりやすくなった。

-重賞勝ちした京阪杯と比べての状態は

高柳瑞師 状態の上下が少ない馬。元気良すぎる、ということはあまりない。

-前走は

高柳瑞師 いい枠ではなかった。ハンデが重くなることを承知で使ったが、その差が効いていた。

-道悪適性は

高柳瑞師 やや重で勝ってはいるけど、それ以上だと分からない。

◆高松宮記念の父子制覇 G1に昇格した96年以降、00年キングヘイロー→09年ローレルゲレイロ、13年ロードカナロア→21年ダノンスマッシュの2組。トウシンマカオの父ビッグアーサーは16年の優勝馬で3組目の父子制覇がかかる。また4代父サクラユタカオー(86年天皇賞・秋)、祖父サクラバクシンオー(93、94年スプリンターズS)もG1を制しており、父子4代のJRA・G1制覇もかかる。

◆桑原の目 前半はしっかりと抑えられ、後半3ハロンは13秒3→12秒1→11秒2と段階的にギアアップ。前向きさと操縦性の両立を図れている。