ヴィクトリアM(G1、芝1600メートル、14日=東京)の最終追い切りが10日、東西トレセンで行われた。調教深掘り企画「追い切りの番人」では、藤本真育(マイク)記者がスプリント重賞3勝のナムラクレア(牝4、長谷川)に注目した。古馬になった今年の年明けすぐからCウッドでの追い切りを導入。心身ともに成長し、パフォーマンスも向上した。今なら、昨年の桜花賞(3着)以来となるマイルの克服も可能だ。

思わず見とれてしまう脚さばきだった。ナムラクレアの最終追いは軽く流す程度とはいえ、軸のブレないきれいなフォームだった。坂路単走、馬なりで4ハロン52秒8-11秒7と時計も申し分なし。騎乗した長谷川師は「今週はリズム良く、という感じ。馬場は重い印象だったけど、仕掛ければもっと(時計が)出ていたと思う。前走時と遜色ない出来です」と納得の表情を浮かべた。

古馬になった年明けから追い切りのパターンを変更した。昨年までは坂路主体だったが、2走前のシルクロードSの中間から最終追いを除き、Cウッドで意欲的に時計を出す形を取り入れた。その効果もあり、シルクロードSは中団から出走馬最速&自身過去最速の上がり32秒9という切れ味で差し切り勝ち。課題だった直線の急坂も克服し、師は「今後の可能性を総合的に加味して、やってみたいと思った」とその段階からヴィクトリアMも視野に入れた。

同じく3、2、1週前追いをCウッド、当週を坂路で追って臨んだ前走・高松宮記念も2着に好走。勝てなかったが、師が「不安だった」と振り返った道悪(不良)をこなしたのは充実の証明だった。Cウッドでの追い切りを主体にしたことで体の連動性が良くなり、硬さが解消。「無駄な力みがなくなり、いい方向に向いている」と走りに柔らかみが増し、より効率良く推進できるようになった。

さらに精神面でも進境が見られた。以前より落ち着きが増し「もともとオンオフがある馬だけど、その中でもオンになった時に力むところが減ってきた」と師。「毎回、驚かされるくらい上がっている」と心身の成熟度が増してきた。

この中間も2、1週前追いをCウッドでこなし、この日の坂路は冒頭の通り。今の状態なら距離延長も問題ないだろう。昨年の桜花賞でもスターズオンアースから0秒1差の3着に好走している。長谷川師が「2、3歳の頃とは馬が違う」と言う今なら、府中のマイル戦で突き抜けるシーンまで想像できる。【藤本真育】

◆前走・高松宮記念組 過去10年で計19頭が出走して【1 0 3 15】。勝率は5・3%、複勝率は21・1%にとどまるが、15年にはストレイトガールが5番人気で勝利し、昨年はただ1頭の前走・高松宮記念組だったレシステンシアが6番人気で3着に好走した。距離延長が敬遠される分、配当妙味は上がる印象だ。今年の同組は2着ナムラクレア、6着ロータスランド、12着メイケイエールが出走予定。