最終追い切りが終わった24日午後、入念に馬房でソールオリエンスのケアに努める男がいた。無敗の皐月賞馬を担当するのは、名畑俊助手(36)。その表情は2冠への期待感の高さを抱かせる晴れやかなものだった。

「今までで一番、トラブルなく順調にきました。あと数日、なにもなくいってほしいですね」

新潟県佐渡市出身。競馬好きの父の影響でサラブレッドに興味を持ち、中学時代の友人とテイエムオペラオーの強さに引き込まれた。高校卒業後に牧場勤務を経て、当時の年齢制限の天井である28歳で競馬学校入り。半年の厩務員課程生活では、競馬学校入学直後の横山武騎手と生活をともにした。「武史をおんぶをしたりしたこともありますよ」。青春時代に始まった縁が今年のダービーで大輪の花を咲かそうとしている。

人気確実の馬を担当する重圧はいかほどか。「朝起きて、吐きそうなときもありましたよ。馬房で脚が腫れていたらどうしよう、とか」。とにかく無事に。その一心だった。大きくなってきた寒暖差にも耐えて、予定通りの調整をこなし続けてくれた。

「1番人気になるのはほぼ間違いないですからね。毛づやなどを見ても、体調はもう1段上がったような気がします。力の入れどころ、抜きどころなどの理解度も上がってきて、いい方にステップアップしてきました」

東京2400メートルはスタンド前発走。今回はレース直前まで耳覆いを厚くして、気持ちの高ぶりを抑えるよう試みる。担当馬と臨む初めてのダービー。最後の最後まで、一瞬たりとも気は抜けない。【松田直樹】(おわり)

◆名畑俊(なばた・しゅん)1986年(昭61)6月19日、新潟県生まれ。高校卒業後、乗馬学校や牧場勤務を経て、JRAの競馬学校入り。14年秋より美浦トレセンでの生活をスタート。主な担当馬はフィエールマン、シュネルマイスター、ソールオリエンス。