平たんなのになぜつらい? その答えが見えた気がする。でんめおやじことメディア戦略本部石井政己(58)の今年2度目のブルベは、2月19日に開催されたランドヌ東京主催の「BRM219東京200キロ 真鶴」。川崎フロンターレの本拠である等々力から中原街道〜国道1号〜国道135号を走り、ケープ真鶴で折り返し。帰りは大磯から国道134号に入り、ランドヌ東京の定番の湘南国際村から八景島、みなとみらいを経由して帰ってくるという200キロ。峠はなく、前回の「はとバス」に続く平たんブルベだったのだが、やはり今回も途中で足がつりそうになるなど意外と苦しみ、目標の10時間切りには遠く及ばない10時間37分での完走となった。これは伊豆のきつい山伏峠を走ったブルベとほぼ同じタイム。なぜ? その理由がはたとひらめいた。


ケープ真鶴
ケープ真鶴

【コース】 等々力アリーナ前〜(中原街道)〜瀬谷〜用田〜戸沢橋〜平塚〜(国道1号)〜小田原〜(国道135号)〜ケープ真鶴〜大磯〜(国道134号)〜茅ヶ崎〜鎌倉〜葉山〜湘南国際村〜野島公園〜(国道16号)〜横浜みなとみらい〜(国道1号)〜新鶴見橋〜サークルK川崎苅宿店


BRM219東京200真鶴半島のコース
BRM219東京200真鶴半島のコース

 スタートは午前6時。3時半に起床し4時過ぎに余裕を持って神奈川県央の自宅を車で出発。しかし、途中でヘルメットを忘れたことに気が付き慌ててUターン。これで20分のロス。よく気が付いた自分に驚くとともに、まだ頭は大丈夫だとひと安心。だが、これで時間はぎりぎりだ。セブンへ寄っておにぎり2個を慌ただしくパクつき、あてにしていた24時間最大600円の駐車場へ着いてみるとなんと満車。みんな考えることは一緒か。不幸は続き、これでブリーフィングは遅刻決定。周辺を車で走り、小杉十字路のところに「夜間300円 昼間1200円」の駐車場を発見。背に腹は代えられぬとここに止めた。


 等々力アリーナに着くと、ちょうどブリーフィングが終わったところだった。


 今回のコースはちょっと特殊。道がどうこうではなく、PCが1つしかないのだ。通常であれば50キロごとにPCとして主にコンビニが設定され、そこで補給やトイレを済ませるものだが、このコースはまず86・9キロ地点のケープ真鶴がチェックポイントとして設定され、そこで売店のある建物とブルベカードの入った証拠写真を撮る。売店で買い物をしても良い。そこで折り返し、たったひとつしかないPCは156・3キロ地点の湘南国際村のファミリーマートとなる。


 真鶴到着はたぶん10時前後。売店は9時から開いているらしいが、食事は簡単なものしかないそうだ。真鶴でお魚でも食べたいところだが、その時間ではまだ開店前だ。それならもう少し走って、正午前に通過できるところにしようかと考え、思いついたのが国府津にある「のんき亭」。国道1号を小田原に向かって走るたびに気になっていたお店だ。ネットで調べると「のんき定食」が魅力らしい。1度入ってみたかったのだが、お昼どきに通る機会があまりなく、時間が合ったときは休みだったりとこれまで縁がなかった。しかし、今回のコースで行くと、のんき亭は110キロ付近。グロス時速20キロと考えると、午前11時半という絶好の時間に到着することになる。遅れても混み始める正午前にはたどり着けるだろう。よし、今回はここでお昼を食べることをミッションとしよう。


午前6時前、スタート前に車検を受ける
午前6時前、スタート前に車検を受ける

 車検が遅かったのでスタートは午前6時少し前。快調に走り出したが、フロントのブレーキの遊びが多すぎる。開放したままになってるのかと確認したが、そうでもないらしい。ストップして調整してみたが、うまくいかない。ワイヤーが緩んだかな。悩んでいるうちにどんどん抜かれてちょっと焦る。効かないわけではないので、厳しい下りもないしこのまま行くかとリスタート。ゴール後にゆっくり直そう。


 信号が多いのですぐに前のトレインに追いついた。後方についていると、ちょっと足が余ってしまうので一気に先頭へ。その後も信号のたびにトレインについたり、ちぎれたり、追いつかれたりしながら中原街道、長後街道を進んで行く。


快晴の中、トレインを組んで走る。藤沢市用田付近
快晴の中、トレインを組んで走る。藤沢市用田付近
富士山へ向かって走る。相模川にかかる戸沢橋付近
富士山へ向かって走る。相模川にかかる戸沢橋付近
富士山はどこで見てもいいね。平塚市東豊田付近
富士山はどこで見てもいいね。平塚市東豊田付近

 この日は晴天。くっきり見える富士山を見ながら気持ちよく進む。用田付近で7、8人のトレインの最後方に付き、途中の信号でちぎれた後、西沖田付近からは4、5人のトレインとなったが、公所付近の坂でトレイン崩壊。先頭に押し出される形となった。追い風もあってそのまま先頭で国府新宿まで気持ちよく回し、国道1号に入ってからも快調に飛ばした。後ろには男性が1人つき、しばらくして信号で女性が追いつき3人で走っていたのだが、国道135号に入って離れ気味となり、真鶴旧道との分岐を過ぎるとバックミラーから2人とも姿が消えた。


 あれ? もしかして旧道だった? 今回のこのコースのほとんどはプライベートのツーリングで何度も走っているので、169キロ地点の野島公園まではキューシートなしで走ることができる。そのため、iPhoneホルダーにクリップでつけているジップロックに入ったキューシートはすでにそこからのものになっている。ストップして確認するのも面倒だ。それに旧道行っちゃうと、真鶴駅を通り過ぎてしまう。「坂の青葉」じゃないし、平たんがウリのコースだからきっと旧道じゃないと決めつけ、そのまま走った。結果はこのまま国道135号を進んで正解だった。


 真鶴駅前を左折し、Y字交差点にさしかかったところで先頭とすれ違った。距離だと8キロだが、チェックポイントでのストップや上りがあることなどを考えると1時間弱の差かな。


 真鶴港までぐいーんと下り、「うに清」の前から上りが始まる。ここで一度離れていた男性のブルベライダーに追いつかれ、あっさりと抜かれる。相変わらず遅いね。


 ケープ真鶴手前でメカトラでストップしている女性ライダーがいたので声をかけると、修理していた男性が「リアディレイラーが折れた」と叫んで教えてくれた。すいません。僕じゃ役に立ちません。男性が2人ついていたので輪行で帰るにしろ何とかなるだろう。


【チェックポイント 86・9キロ ケープ真鶴】午前10時(1時間48分)


ケープ真鶴到着
ケープ真鶴到着
与謝野晶子の歌碑
与謝野晶子の歌碑
水平線が綺麗に見える
水平線が綺麗に見える
富士山の方向は残念ながら雲が…
富士山の方向は残念ながら雲が…

 86・9キロ地点のケープ真鶴には午前10時の到着で、貯金は1時間48分。コンビニストップもなく一気にここまで来たこともあり、いいペースだ。自転車は4台ほどあったが、食事でもしているのかブルベライダーの姿は見えない。


 実はフォトチェックは奥の方だと思っていて、そのまま岬の先まで行ったのだが、「ケープ真鶴」と書かれたものはない。与謝野晶子の歌碑でいいかなと思ってとりあえず撮影して売店入口まで戻ってみると、女性ライダーが建物と一緒に写真を撮っている姿が見えた。あれ、そっちか。たしかに「ケープ真鶴」と書かれている。もう一度撮り直し。


ここが写真のチェックポイントだった
ここが写真のチェックポイントだった

 売店に入ってみると奥にレストランらしきものがあり、何人かはそこで食事しているようだったが、こちらはお昼の場所は決まっているので、トイレだけ済ませて出発。この日は天気が良く雨の心配もなく、寒くて長いダウンヒルもないのでレインウエアもウインドブレーカーも必要とせず、サドルバックはスカスカだったので、3袋1080円のひものを酒のつまみに購入。のんべえの長女には好評だった(^o^) レストランのメニューは見なかったが、入口ののぼりを見ると「こだわりカレー」がおすすめらしい。


珍しくおみやげを買いました
珍しくおみやげを買いました

 この日のウエアは上半身が冬用のウインドブレークジャージーを含め4枚。下半身はウインドブレークタイツ。手はインナーグローブとウインドブレークグローブ。スタート時点は寒かったが、ちょうど良い感じ。早川口を左折して海岸線に出ると暖かさを感じた。いつもの事だが、ここは晴れればぽかぽかして気持ちいい。さらに真鶴を上っている時は暑さも感じたが、脱ぐのも面倒なのでそのまま。ただし、インナーグローブだけは脱いだ。


 真鶴半島の岬付近は時計回りの一方通行。ケープ真鶴を折り返すと、分岐を左へ曲がって森の中の道を進み、県道739号に復帰。西武警察消防車を過ぎると少し上り返し、再びY字交差点まで下る。そして真鶴駅前を右に曲がると、向かい風(T_T) そういえば、来る時はくるくる回せて気持ち良かったもんな。帰りは地獄か。


 ブルベライダーとすれ違ったのは十数人。50人以上参加しているので真ん中から後ろぐらいの位置だろうか。それにしても腹が減った。ぐーぐー鳴り出しちゃったよ。目的の「のんき亭」まで真鶴駅からの20キロが遠かった。小田原港付近で妥協しようかと思ったが、初志貫徹。予定通りの午前11時20分ごろに国府津に到着した。ここまで距離は110キロで経過時間は5時間20分。グロスでかろうじて時速20キロを超えている。いいペースだ。


 お昼前とあって先客はたった1組。すぐに「のんき定食(税込み1200円)」を注文。しばらくすると、タレ味のねぎま2本と薄皮1本の焼き鳥重と豚汁、温泉卵とお新香ののんき定食がやってきた。汗がひいてきて少し寒さを感じていたので、暖かい豚汁は最高だった。たっぷりとかかったタレはうなぎのそれのような味で、それだけでご飯がいくらでも食べられそうだ。メニューをよく見るとうなぎもありなるほどと思ったが、こちらはランチで食べるお値段ではなかった。さて肝心の焼き鳥の味だが、ブルベ中とあって急いでかき込んだため、実はよく分からなかった。だが、ボリュームはたっぷりで、腹にぐっときた。時間はあるのだからゆっくり食べればいいのだが、ブルベライダーが走り去っていくのを見ると何となく気がせいてくる。今度ゆっくり来ようと思い、滞在二十数分で慌ただしく食事とトイレを済ませて出発した。のんき定食は30年以上前からの人気メニューだそうで、若手のブルベライダー2人組も吸収されてきた。


焼き鳥重と豚汁の「のんき定食」
焼き鳥重と豚汁の「のんき定食」

 こうやってブルベ中にお店で食べるのは3度目。最初が08年2月16日の埼玉300「アタックビーフライン」。折り返しがドライブインだったので必然的に食べざるを得ず、けんちんうどん(650円)を腹に入れた。2度目は09年2月22日の埼玉200(越生〜横川往復)で、おぎのやで釜飯を食べた。「峠の釜飯」を食べに行くのが目的のブルベだったからこれは当然。この2回を除き、何十回と走ったブルベの食事はすべてコンビニだった。


 この日はここでがっつり食べたおかげで、結果的に残り90キロで補給する必要もなくゴールまで走り続けることができた。ずっとコンビニ食だと、400キロ以上になるとさすがに何を食べていいか分からなくなることもしばしば。今後はちゃんとお店で食べ、しっかり補給するようにしよう。


 さて、向かい風の中、大磯駅前を右折し国道134号へ入る。ここから逗子の渚橋までの26・4キロは平たんな一本道。ペダルをこぎ続けるしかないのだ。そう、当たり前ながら平たんな道はペダルを回さないと進まないのだ。これが峠越えのあるブルベ、たとえば昨年8月に参加した「道志みち200」では3000メートル以上上るが、当然下りも3000メートル以上ある。30キロ以上上り続けるどうし道も、帰りは30キロ以上の天国の下りとなり、確実に貯金は1時間増える。ペダルを回さなくても進むのだ。GPSデータによるとこの道志みち200では上り区間が43・5キロ、平たん区間が118・2キロ、下り区間が44・3キロ。つまり44キロほど楽ちん区間があるわけだ。


 これが今回のコースだと上り区間が22・9キロ、平たん区間が159・7キロ、下り区間が24・1キロとなる。ただし、峠を越えるわけではないので坂は緩やかで、獲得標高は1900メートルほどあるがたいしたことはなく、天国の下りはほとんどない。


 時速30キロ前後でず〜〜〜〜っと回し続けるのは、かなりつらい。それに信号ストップが重なり、ストップアンドゴーの繰り返しで足への負担が増える。さらに路面状態によっては気持ち良く回せない。一本道だと飽きもくる。峠越えも忍耐力が必要だが、平たんコースにもそれがなくてはならない。これが平たんが楽とは言えないという理由なのか。ようやくその真実にたどりついたぞ。そう思いながら、逗子へ抜けるトンネル手前のちょっとした坂をのぼっていたら両足がつった。平たん、恐るべし。


湘南国際村へ向かう上り坂
湘南国際村へ向かう上り坂

 逗子から葉山を抜け、このコースの最難関の湘南国際村の上りへとさしかかる。こう配が8%、9%と続き、左へカーブすると7%。この7%のなんと楽なことよ。


 上っている時から汗だくとなり、あまりの暑さに気持ち悪くなりそうだった。


【PC1 156・3キロ ファミリーマート湘南国際村店】午後1時56分(2時間48分)


 上りのピークにある、156・3キロ地点にあるPC1のファミリーマート湘南国際村店には午後1時56分に到着。貯金は2時間48分で、グロスは時速19キロ台だ。残りは47キロで、天国の下りが20キロほどあれば9時間台のゴールも望めそうだが、横浜の中心街を抜けるのにグロス時速23・5キロで走れというのは無理な話だ。のんびり急がず、安全に行こうか。アクエリアスを一気飲みしてリスタート。


PC1を出発すると葉山町に入る
PC1を出発すると葉山町に入る

 こう配9%の天国の下りをちょっとだけ楽しみ、逗葉高校へ向かって上り返した後は本当に「ど平たん」コースとなる。


 船越町を直進し、野島公園駅を右折したあたりからキューシートとにらめっこ。ところが2度目なのに「イガイ根公園前」交差点を見逃して直進。さらに「金沢スポーツセンター前」も見逃した。いや、戻って確認したら信号に標識がなかったと思う。1月の「はとバス200」で走っていたから、何となく雰囲気で違うとひらめいたが、初めてだったら2〜3キロは直進していただろう。ミスコースが数百メートルで済んだのは奇跡だ。


 その後は横浜スタジアムからみなとみらいを抜け、国道1号でゴールを目指す。微妙なアップダウンと路面状態の悪い所が多く、思ったほどスピードが上がらない。新鶴見橋からは初めての道だったが、走ってみると道なりにいけばいいという簡単な道だった。


ゴール直前。明るいうちに帰ってこられた
ゴール直前。明るいうちに帰ってこられた

【ゴール 203・4キロ サークルK川崎苅宿店】午後4時37分(2時間53分)


 ゴールとなる203・4キロ地点のサークルK川崎苅宿店へは午後4時37分に到着。トータル時間は10時間37分で貯金は貯金2時間53分。途中で休んだわけでもないのに、PC1から貯金は5分しか増えていない。改めて、恐るべし、平たんコースと信号峠。


 今回のブルベは変則のチェックポイントとPCだったが、天気にも恵まれ、最初のチェックポイントまでの86・9キロは一気。ケープ真鶴からのんき亭まで24・1キロを走って昼食をちゃんととった後は、46キロ先のPCまでは休みなく走り、残りの47キロでも、いつものゴール直前でのコーラ休憩もすることなくそのまま走りきった。自分としてはいいペースのブルベだった。


ゴール受け付けの川崎市総合自治会館
ゴール受け付けの川崎市総合自治会館

 だが、真鶴まではあんなにいたブルベライダーが折り返しの大磯付近からはほぼ見かけず、PC1では湘南国際村を上っている時に抜かれたブルベライダーが1人いるだけ。スタート時に上ってくるブルベライダーとすれ違った後は、国道1号で2人ぐらい抜いたが、ゴールでエクレアを食べているときも誰も到着せず、ゴール受け付けの205キロ地点の川崎市総合自治会館でもブルベライダーには誰1人として会わなかった。相当遅かったのかなと思ったが、リザルトを見ると逆で速かったようだ。皆さん、寄り道して楽しんだようですな。


 さて、3月に200キロ、4月に300キロの山岳コースを走った後、5月には浜名湖往復の平たん600キロに挑戦する予定。坂は熱海峠だけで、たぶん580キロぐらいは平たん。ペダルを回し続けることができるだろうか? 今から不安だ。ちなみに昨年10月に走った天城越え600では、上り88・3キロ、平たん435・8キロ、下り90・4キロだった。【メディア戦略本部 石井政己】