桜の開花が遅れたせいで、道中は花見気分。しかし、山梨県道36号の通行止めで河口湖へのアプローチが鳥坂峠経由に変更され、獲得標高は変わらないものの難易度が一気に上がった。やっぱり今回も「アオバヒドイ」コースだったよ。


河口湖から臨む富士山
河口湖から臨む富士山

【コース】東京都稲城市〜大垂水峠〜新笹子トンネル〜石和〜七里岩ライン長坂〜笛吹ライン〜鳥坂峠〜河口湖〜山伏峠〜道志みち〜東京都稲城市


あおば300km長坂のコース
あおば300km長坂のコース

 でんめおやじことメディア戦略本部石井政己(58)が、4月15日に行われた「BRM415あおば300km長坂」に参加した。このコースはスーパーではなく、大垂水峠、笹子峠を越え、七里岩ラインで絶景を楽しんだ後、市川大門から県道36号を使って河口湖へ向かい、山中湖から山伏峠を上って道志みちを帰るというもの。獲得標高は3600メートルだが特にきつい坂もなく、普通のブルベコースだった。


 ところが直前に県道36号が通行止めとなり、河口湖へは鳥坂峠を越えて行くことになった。標高300メートルから標高1000メートルを約22キロで上る平均こう配3%の普通の坂から、標高320メートルから標高1000メートルを約8キロで上る平均こう配8%近い激坂となったのだ。ついてない(T_T)。


 天気予報によると、気温は高くなるが午後から雨が降る所があるという。うまくすれば時間差で雨を逃れることができそうだが、ツキがないと雨中のヒルクライムか、ダウンヒルとなりそうだ。そのため、ウエアは半袖インナー、手に入れたばかりの「青葉」の半袖ジャージー、アームウオーマー、レーパン、レッグウオーマー。バックポケットにモンベルのゴアテックス・レインウエア、モンベルの超コンパクト・ウインドブレーカーを突っ込み、サドルバックには最後の道志みちの下りに備えて長袖インナー、冬用グローブ、ネッックウオーマー、レインシューズカバーを滑り込ませた。


午前6時20分、スタート地点の大丸公園には桜が満開
午前6時20分、スタート地点の大丸公園には桜が満開

午前6時20分、青空のもと、ブルベ参加者が続々と集まってきた
午前6時20分、青空のもと、ブルベ参加者が続々と集まってきた

 桜が満開のスタート地点の稲城・大丸公園には午前6時20分ごろに到着。何年かぶりにHさんに会った。お久しぶりの挨拶をした後、自分にとっては初挑戦となる鳥坂峠について聞いてみると、「平均8%で距離は8キロ。20%がある」ということらしい。こう配20%なんてこの前の「鶴鶴鶴200」で走った、いや歩いた厳道峠並みの傾斜だ。あぁ、また歩く羽目になるのか。「ゴルフ場の先…」と続けて説明してくれたが、ほかの人から話しかけられて会話はここでストップ。「ゴルフ場の先」に一体、何があるんだろう? 不安な気持ちで午前6時52分にスタートした。


 青空が広がる気持ちいい天気の中、連光寺坂を上り、北野街道を西へ進み高尾へ向かう。最初はトレイン後方で楽をしていたのだが、やがて信号でちぎれ、館町までは先頭を引いた。平たんだとなんとか人並みのペースで走れる。


 甲州街道に入った付近で、女性ライダーの後ろについた。昨年のブルベから何度となく見かける女性で、完走タイムは自分よりいつも速い。昨年の伊豆スーパー300で1時間半、今年3月の鶴鶴鶴スーパー200では30分の差があった。この先は大垂水峠。ついていけるところまで行ってみよう。


 高尾山ICを過ぎ、「いろりの里 ごん助」付近まではついていけたが、きつくなるラブホテル付近から徐々に引き離された。何とか視界から外れるところまで遅れないようにしようと頑張ったが、ピーク直前の大垂水のバス停付近で視界から消えた。この女性は、伊豆スーパー300のスタート地点となった湘南平にも自走でやってくる強者(つわもの)。かなうわけもないか。上りが強いとタイムも良くなるのは自明の理だ。ただ、途中まで引いてもらったこともあって、これまで何度となく大垂水峠を上っているが、最速タイムが出たような気がする。


午前8時30分、大垂水峠のピーク。ここから神奈川県
午前8時30分、大垂水峠のピーク。ここから神奈川県

 その女性ライダーとはもう会えないと思っていたが、下りの途中で追いついた。慎重に下っている様子だった。上りが強い人は下りや平たんをのんびり走れるからうらやましい。上りヘタレとしては、下りと平たんでばん回するしかないが、上りに比べるとそれほど時間を稼げるわけではないのでねぇ。結局、下りでその女性をパスし上野原のPC1ではやや先着したが、新笹子トンネルへの上りで抜き返され、PC3の手前1・7キロの長坂下条の信号で折り返してきた所をすれ違って以降は姿を見ることはなかった。リザルトを見るとPC3では20分差だったが、ゴールでは1時間近くまで広がったようだ。


【PC1 50・4キロ セブンイレブン上野原四方津店】午前9時23分(貯金1時間7分)


 50・4キロ地点の上野原のPC1には午前9時23分に到着。貯金は1時間以上あり、順調なペースだ。おにぎり1個をほおばり、アクエリアスを一気飲みしてすぐにリスタートした。坂ヘタレは「コンビニ休憩は短く」が鉄則だ。


 桜が満開の甲州街道をひた走る。天気も良く、気分のいいライドだ。


甲州街道の桜(猿橋付近)
甲州街道の桜(猿橋付近)

甲州街道の桜(笹子町付近)。左に流れるのは笹子川
甲州街道の桜(笹子町付近)。左に流れるのは笹子川

 大月から先は昨年3月の青葉ブルベ笹子200以来。この時は笹子駅までしか行ってないので、新笹子トンネルとなると09年5月以来、8年ぶりだ。


 強烈な向かい風の中を進む。緩やかな上りだが、初狩駅の先の甲州街道とJR中央線が交差するところはこう配7%。これを越えるとしばらく緩い上りとなるが、笹子駅を過ぎるとこう配がきつくなり、ピーク直前はこう配8%。これをこえて右にカーブすると新笹子トンネルが見えてくる。


午前11時3分。新笹子トンネル到着
午前11時3分。新笹子トンネル到着

全長2953メートルの新笹子トンネル
全長2953メートルの新笹子トンネル

 新笹子トンネル突破はこれで5度目。当然、いつも命懸けだ。ドライバーの善意を信じて走る。


 いったんストップして尾灯3つに加え、ヘルメットの尾灯も点灯。後方を確認して車が途切れたスキを狙って発進した。実は、甲州街道を走っている途中でバックミラーを止めていたネジが振動のせいで緩んで外れた。グラグラしているなと気がついたときはすでにネジはどこかへ落ちた後だった。差し込むタイプではなく、ネジで締めるタイプだったので、ネジがなければ再起は不能。バックミラーがあれば後続に車がきているかどうかは分かるのだが、この時はそれもない。後方確認ができず不安だったが、とにかくふらつかないで真っ直ぐ走るだけだ。


 トンネルの最初は緩やかな上りで、すぐに下りとなる。逆は走れないなと思いながら必死でペダルを回すのだが、やはり3キロは長い。幸いなことに車は乗用車が2台ほど通過しただけで、恐怖のトラックも現れず無事脱出! と思ったら、もう一つ短いトンネルがあった。


 5度目の突破も成功したが、今回が一番楽だった気がした。慣れと経験だろうか。


新笹子トンネルを突破
新笹子トンネルを突破

 新笹子トンネルを抜けると十数キロのダウンヒルが始まる。途中、柏尾交差点で甲州街道を離れ、県道38号に入るのだが、交差点名は確認せず、距離と「右折注意」というキューシートの注意書きを信じて(確かに右折しづらかった)曲がったのだが、現れる道路標識が34号。キューシートを見ても「K38・R411」とあるだけだ。スマホで確認しようかどうしようかと悩みながら下っていたら、反射ベストを着たブルベライダーの姿が見えたのでほっとひと息。信号などで3人ほどのトレインになり、石和のPC2へ滑り込んだ。


【PC2 101・9キロ ファミリーマート石和町松本店】午前11時55分(貯金1時間52分)


 昨年10月の青葉ブルベ天城越え600以来のファミリーマート石和町松本店。あの時は午後11時42分にここにたどり着いた。この日は午前11時55分。昼と夜では風景が違うが、なんとなく懐かしい。また6月に来ることになりそうだが…。


 約100キロを5時間ほどで走り、貯金は1時間52分と増えた。順調なペースだ。昼時とあって腹が減ってきたので298円(安い!)のこだわりカレーを急いでかき込み、水分補給もしてリスタートした。


 この先は山の手通り(県道6号)を進むのだが、甲府駅が近いとあって大渋滞。信号も多く抜け出すのに苦労した。


 ようやく渋滞を抜けて少し上り、双葉保健福祉センターを左に曲がり次の関谷東交差点で信号待ちしていたら、ポツリと最初の一滴を感じた。ちょうど中央高速の双葉ジャンクションのあたりだ。見上げれば雲が広り、空模様が怪しくなっていた。来るかな、雨。


 県道は6号から17号にかわり、右手に村松石材店を見ながらY字交差点を右方向へ入ると、いよいよ七里岩ラインとなる。本日のセミファイナルだ。本来ならメインイベントとなるのだが、それは遺憾ながら鳥坂峠に変更となった。


午後1時6分。絶景の七里岩ラインは激坂から始まる
午後1時6分。絶景の七里岩ラインは激坂から始まる

午後1時6分。桜は綺麗だが、青空は消えた
午後1時6分。桜は綺麗だが、青空は消えた

 いきなりの激坂から始まるこの七里岩ライン。あおば公式サイトでは「晴れていれば眺めは最高。往路は右手に八ケ岳、左手に南アルプスを臨み、復路は富士山が臨めます」と謳い、あおば会長のK氏は14年のブログで「この30km足らずの道路を走りたいがために、わざわざ東京から300kmも走るわけだ(笑。」と絶賛している。この甘言に誘われてエントリーしたわけだが、石和付近までは青空が見えていたが、ここにきて怪しい雲がたれこめ、ぽつりぽつりとだが水滴が落ちてきた。しかし、レインウエアを着るほどではない。


 緩やかな坂を想像していたが、意外ときつい坂が次々と現れた。だが、上りっぱなしではなく下りもあり、アップダウンを繰り返しながら上っていくような感じだった。


 しばらく走るとNHK大河ドラマの「真田丸ロケ地」というのぼりがある開けたところに出た。新府城跡で駐車場もあり観光客らしき人の姿も見られた。あいにく真田丸は見ていないので詳細は分からないが、調べてみると一昨年の10月にロケが行われたようで、番組の第1回目の終盤に炎上したようだ。上り切ったその先には綺麗な桃畑が広がっていた。しかし、見上げると雨雲。いつ降りだしてもおかしくない。


ピンク色に染まる桃畑。空には怪しい雲が…
ピンク色に染まる桃畑。空には怪しい雲が…

 終盤のきつい上りを過ぎ、眺めのいいところへ出たのだが、左右を見ても絶景は雲の中。残念。また来年来いか?


右手を見ると、雲に覆われた八ケ岳
右手を見ると、雲に覆われた八ケ岳

左手にあるはずの南アルプスも雲の中
左手にあるはずの南アルプスも雲の中

【PC3 135・9キロ ローソン山梨長坂町店】午後2時12分(貯金1時間52分)


 1時間ほどかけて七里岩ラインを走り、折り返しのPC3に到着。幸いなことに雨はポツリときただけで降りだしてはいない。ここではおにぎりとコーラを補給した。


PC3の手前にも桜が咲いていた
PC3の手前にも桜が咲いていた

 スタートから135キロで所要時間が7時間強ということは、グロス速度は19キロ台。自分としてはいいペースでここまできた。これを維持すれば15時台のゴールとなるが、鳥坂峠があるのでまず無理だ。今日中(深夜0時まで)に帰れるかどうかというところだろう。


 ここで万が一に備えてレインシューズカバーを付ける。これだけは雨が降りだしてからでは遅いし、簡単に付けられるものでもないからね。そして、これから50キロ先の鳥坂峠のアプローチまでは下り基調となるので、モンベルの超軽量ウインドブレーカーも着た。


 最初に発表されたコースだとそのまま七里岩ラインを下るのだが、修正されたコースはPC3から1・7キロ先を右折し、甲州街道へ出ることになっていた。その甲州街道へ下る豪快な下りの途中で真正面に南アルプスが見えるところがあり、ここもわざわざストップしたのだが、残念ながら雲にさえぎられて絶景は拝めなかった。


目の前には南アルプスの絶景があるはずだったが…
目の前には南アルプスの絶景があるはずだったが…

 花水坂入り口交差点で甲州街道へ出てからは緩い下り。そして円野郵便局交差点を右折し県道12号へ入る。この道は何度もブルベで走った懐かしい道。最後に走ったのは8年前の5月の沼津400。この時は行きも帰りも雨。沼津をスタートして安曇野往復のコースだったので300キロが雨だった。曲がってすぐの所の田んぼの真ん中にいる武田信玄像もそのままあり、ちょっと安心した。


 この県道も緩い下り基調。その途中の韮崎の付近で「わに塚の桜」という看板が目に止まった。駐車場もあって警備の人もいる。一体どんな桜だろうと思い、右手を見てびっくり。道から百数十メートル先に立派な大木の桜が満開となっていた。後になって調べて見ると「推定樹齢300年、幹周り3・6メートル、樹高17メートルのエドヒガンザクラ」(富士の国やまなし観光ネットによる)で市の指定天然記念物となっているそうだ。さらに同サイトには「晴れた日には、わに塚の桜から一緒に八ケ岳や茅が岳が一緒に見れて写真を撮るのにオススメの場所」ともある。この時は曇りでそこまでは見えなかったが、桜1本でも山並みをバックにしてなかなか迫力のある風景だった。


 しかし、残念なことに写真はない。実はデジカメがスタート前に故障し起動しなくなったのだ。前日にはちゃんと起動し、時刻を合わせ直したのだが、当日になってまさかの故障。これまでも寒さのせいで起動しないことはあったのだが、バッテリーを入れ直すか、多少気温が上がれば起動していた。それが何時間たってもうんともすんとも言わない。そのため、この日の写真は全てiPhoneによるもの。この方が画質が良かったり、撮影場所が分かっていいのだが、いちいちストップしてサドルバックから取り出して撮影するのは面倒。だからこの日も最低限の写真しか撮っていない。この時もストップしようかどうしようか迷ったが、何となくそのまま撮影もせずに通り過ぎてしまった。だが、しばらくして「この時期にここに来ることは2度とない。この風景に出会えることも2度とない。今日、この桜が見られたのも奇跡。桜の開花が遅れ、コースが変わらなければわに塚の桜を知ることもなかった」と思い始めたのだが、かなり下った後だったので引き返すことは断念した。今、思い返しても残念なので、今後の糧としよう。「下りでも絶景では止まること」だね。


【PC4 171・8キロ ローソン 浅原橋東店】午後3時52分(貯金2時間36分)


 これまでのブルベで必ず曲がっていた小笠原橋北詰め交差点は直進。しばらく走るとPC4に到着した。下りで3人ほどのトレインにパスされ、信号で追いついたりを繰り返し最後は5〜6人のトレインとなっていた。PC3からは35キロほどなので水分だけ補給し、素早くリスタートした。


 豊積橋で笛吹川を渡り、笛吹ライン(国道140号)に入る。この頃には天候は回復。青空が見え始めていた。


気持ちのいい笛吹ライン
気持ちのいい笛吹ライン

 笛吹ラインは路肩は狭いが、気持ち良くペダルを回せる道だった。追い風になっていたかもしれないが、かなりスピードを出すことができた。向かい風はもちろん分かるのだが、追い風はあまり風を感じないので分からない。信号ストップやのぼりで「あ、追い風だったんだ」と気付き、「実力じゃなかったのか」とがっくりする。


 そして高家南交差点に到着。ここを右折すると本日のメインイベントの鳥坂峠へのアプローチが始まる。鳥坂峠まで8キロ、若彦トンネルまでは12キロだ。


午後4時36分、高家南交差点を右折すると坂が始まる。はるか先の山を越えるのか…
午後4時36分、高家南交差点を右折すると坂が始まる。はるか先の山を越えるのか…

 出だしから時速は10キロを割っている。周囲にはまだ民家もあり、見た目はそんなに急こう配でもないのだが、きつくて回せない。ピークまで8キロなので4キロで休んで刻もうと思ったのだが、早々に断念。2キロぐらいで足を付く計画に変更した。


 ちょうど2キロ付近で立派な桜の木を発見。わに塚で写真を撮れなかった反省と、あまりのきつさに音を上げたこともあり、あっさりとストップ。屈伸などしながら写真タイム(=休憩タイム)とした。


午後4時37分、八代ふるさと公園入口にある桜
午後4時37分、八代ふるさと公園入口にある桜

 ひと休みして再び上り始めるが、この先はほぼ直線のこう配10%前後の急坂が続く。ダンシングをまじえながら必死で上る。路肩に魅力的な平たんなところがあったが数百メートル上っただけで休むわけにもいかず、とりあえず2キロは上ろうと頑張った。時速は6キロ前後。歩くよりは少し速いスピードで直線の上りをよろよろと上っていく。幸か不幸か、その後は漕ぎ出しができそうな平たんな場所はなく、折れそうな心と戦いながら走り続けるしかなかった。


 やがて、笛吹ラインで抜いたブルベライダーにあっさりとかわされる。やはり上りが強くないとダメだねぇ。


午後5時11分、浅川
午後5時11分、浅川

 やっとのことで浅川にかかる平たんな橋にたどり着き、足を付いて休憩。距離は上り始めた地点から4キロ強。あと半分だ。水分を補給し、SOYJYOもぱくつく。のんびり休んだが、ここでは抜かれることはなかった。


 橋のあたりから路面に滑り止めが刻んであったのだが、こう配は緩やか。おかしいなと思いながら右カーブを曲がり、ゴルフ場の看板を過ぎると「登坂車線始まり」の標識が突如、現れた。そして壁のような坂。そうか、ここから始まるのか、20%が。スタート前にHさんは「ゴルフ場の先から20%が始まる」と言いたかったんだ。


 ここはダンシングで無理矢理上るしかない。ここで途中のPCで耳に入ってきた鳥坂峠情報を思い出した。「20%は400メートル」。その距離なら歩かないでも耐えられるだろう。全身を使ったダンシングでその情報を信じて上っていくと、「登坂車線おわり」の標識が目に飛び込んできた。あそこまで頑張れば、終わったも同然だ。


午後5時24分、登坂車線はここで終わり
午後5時24分、登坂車線はここで終わり

午後5時24分、この坂を上ってきた(振り返って撮影)
午後5時24分、この坂を上ってきた(振り返って撮影)

 心臓ばくばく、時速は4キロ台で激坂をクリア。浅川からここまでの600メートルを10分以上かけて上ってきたことになった。当然、ここでも足を付いて休憩した。残りは3キロ。もうひと踏ん張りだ。もう足付きなしで行けるかな。


 この先からようやく峠らしいクネクネ道が始まるが、こう配は相変わらずきつい。時速は10キロを下回るのだが、20%の激坂の後なので気分的には楽に感じる。不思議なものだ。


 残り1・8キロから100メートルごとに距離表示の標識が現れるようになった(確か)。サイコンとの数字も合っているので、トータル8キロは間違いなかった。ところが残り600メートルで標識は消えて2度と現れなかった。サイコンがあるからいいやと気にせず、残り100メートルを切った時は思わず「あと○メートル」とカウントダウンしたのだが、「0メートル」になってもピークに着かず、まだまだ上る雰囲気。結局、200メートルほどオーバーした所がピークだった。平たんなら違いは気にならないが、こういう激坂ではたとえ100メートルでも違うと落ち込むよね。


午後5時51分、鳥坂トンネル
午後5時51分、鳥坂トンネル

 距離8・2キロの鳥坂峠を1時間15分かけて制覇。いや〜ぁ、疲れた。


 しかし、上りはこれで終わりではなかった。下り基調の鳥坂トンネルを抜けて県道36号へ出るとこう配8%が待っており、これを上り切るとスタートからほぼ200キロ地点の若彦トンネルとなる。


午後6時9分、若彦トンネル
午後6時9分、若彦トンネル

 その8%もやっとのことでクリア。上りはこれでほぼ終了だ。まだ山伏峠が残っているが距離が短いので、ここでウインドブレーカーを着るライダーが多かったようだ。自分は山伏峠を越えた後で着ようと思っていたので、ここでは写真を撮っただけでスルーしたが、河口湖への下りは汗が冷えて少し寒かった。


 下り切って河口湖が見渡せるところに出ると、目の前に富士山がば〜ん! 間に合った。ようやく絶景に出会えたよ。


午後6時21分、河口湖から臨む富士山
午後6時21分、河口湖から臨む富士山

 このころから段々と暗くなってきて、河口湖美術館前を左折する時には真っ暗となっていた。この先は長い新倉河口湖トンネルを抜けるのだが、ここも下り基調。結果的にこのブルベで最初に突破した笹子トンネルを始め、全てのトンネルが下り基調で助かった。これが逆だったら走れないね。


 寒さも感じ、腹も減ってきた。このままでは道志みちは下れないと思い、新倉河口湖トンネルを抜けた後に最初に見つけたセブンイレブンでストップし、カップヌードルを補給。少し暖まった。


 この後、砂原橋東を右折するのだが、国道138号まではちょっときつい上りだ。この上りでなんと若いブルベライダーをパスした。坂で抜くなんてブルベでは初かもしれない。まだまだ足は元気だと思ってほくそ笑んだが、ピークの国道138号に出るところの信号につかまっている間に追いつかれ、こう尋ねられた。

 「すいません。このあたりにコンビニありますか」

 いくらでもあるよと答えると

 「いや〜、補給失敗しちゃって。力がはいらないんすよ」

 そうだよね。そういう状態じゃないと抜けないよね、とちょっとがっくり。


 明神前交差点で直進しかけたブルベライダーを救い、山中湖沿いの平たんでは2人ほど抜き、平野交差点を左折。道志みちに入る。このあたりは走り慣れた道なので、真っ暗でも平気で走れる強みがある。


午後8時8分、山伏トンネル
午後8時8分、山伏トンネル

 山伏トンネルには午後8時8分に到着。残りは約70キロだが、もう終わったも同然。長袖インナー、ウインドブレーカー代わりのレインウエアを着て、さらに冬用のグローブ、ネックウオーマーをつけ、道志みちを両国橋までの約25キロの下った。その先は国道413号の神奈川県側の最高標高まで上り返した後、再び下り基調となって最終PCを目指す。


【PC5 265・8キロ サークルKサンクス津久井青野原店】午後9時41分(貯金3時間3分)

 

 最終PCで貯金は3時間3分。鳥坂峠で貯金をはき出したが、道志みちで取り戻し、16時間台のゴールが出来そうだ。ここではポカリスエットとチョコクロワッサンを補給した。


 国道412号からは串川橋を左折するコースとなっているのだが、長竹三差路を左折し新しい道を新小倉橋へ向かうコースにならないのだろうかといつも思う。これだと途中からこう配5%の気持ち良い下りとなるんだけどね。宮原でストップするのもいやだし、左折した上りもいやなんだよね。


 工業団地入口交差点で先を走っていたブルベライダーが直進した。少し離れていたので救えなかったが、信号にある看板の字が消えた部分があり、夜だと余計に分かりにくい。自分も初めてこのコースを走った時、方向的にも左折はおかしいとスマホで地図を確認した。ほかにも直進したライダーはいたようで、この交差点は鬼門ですな。この時は後続がいたので確認しあったのだが、その人は次の西橋本二丁目を自信満々で左折してしまった。


 最後の尾根幹は200キロの時はちょうど夕方の渋滞と重なるのでいやだったのだが、この日は深夜。車もおらず、信号のタイミングも良く、うまい具合に先行するライダーに追いつき引いて貰う形になったので、快適に走り抜けることができた。


【ゴール 303・2キロ 稲城大丸公園】午後11時39分(貯金3時間21分)


 16時間39分で無事にゴール。なんとか今日中に帰ってくることができた。途中、ポツリときた雨も結局、塩崎から長坂付近だけであとは青空の中のライドとなった。どっちかというと逆になってくれればもっと良かったんだけどね。


 桜満開のライドのゴールを、再び大丸公園の夜桜が迎えてくれた。翌日には自宅周辺はもう葉桜となったところが多かったので、最後のチャンスを楽しめたようだ。


午後11時39分、ゴール
午後11時39分、ゴール

ゴールの大丸公園の夜桜
ゴールの大丸公園の夜桜

 鳥坂峠はもう一度行ってみたいと思わないが、七里岩ラインは天気のいい時にリベンジするかな。道中は「アオバヒドイ」と思いながら坂を上ったが、終わってみるとやっぱり今回も楽しいブルベだった。【メディア戦略本部 石井政己】